パナマ文書、巨大リークを専売化するメディア
生データはメディアしか読み解けないからメディアが扱うのだが、それは世界の人々にとって幸せなのか
”ビッグリーク”の時代 パナマ文書はリーク史上初のブランドに仕立て上げられた Simon Dannhauer-iStock.
パナマ文書のニュースはもうご存じだろう。では、パナマ文書に専用ウェブサイトが用意されていることや、#panamapapers のハッシュタグもあることはご存じだろうか。ジャーナリストたちがパナマ文書をいかに「モノにした」か、ニューヨーク・タイムズがなぜパナマ文書について知らされていなかったのか、今回のリークの規模がいかにケタ違いか(文書にして1150万件、データにして2.6テラバイト)?
パナマ文書には2つの側面がある。1つは、法律事務所モサック・フォンセカの内部告発者がもたらしたらしいナマの巨大データ、という側面。データのほとんどは、オフショア法人の設立と投資に関するもののようだ。その多くは公明正大だが、別の多くは世界から集まったドス黒い金だ。2つめは、ジャーナリストたちの協同作業による分析・調査・公開を経て、グローバル・ジャーナリズムの一大イベントになったという側面だ。
今回のように、リークが製品のように扱われるのは初めてで、現実とは思えない。まるで新製品の発売だ。国境を越えたジャーナリスト・チームと洗練されたホームページ。リークがあって、計画が練られて、誕生したのが、ジャーナリズム印の「パナマ文書」というブランドだ。
ここには不気味なメッセージが込められている。ウィキリークスが暴露した外交公電などゴミだ、不倫サイト「アシュレイ・マディソン」の顧客データベースも問題外、それよりも2.6テラバイト分のナマの腐敗情報のほうがずっと凄い。
【参考記事】不倫サイトがハッカーに襲われたら
まずはこのチャートを見てくれ、と彼らは言う。いちばん上の長いバーが今回のリークだ。どうだ、大きいだろう!
リーク情報の価値はいつからテラバイトで決まるようになったのだろうか?
パナマ文書の発覚で、アイスランドの首相は辞任に追い込まれた。大したものだ、そしてこれはほんの序の口だ......。
ここでの売り物は我々が日ごろから読んだり買ったりするニュースだけではなく、ジャーナリズムそのものだ、という気がしてならない。ブランド化された大量のリーク情報はジャーナリズムの新しい商品となり、報道機関の存在意義になる。彼らはこう言っているようでもある。「この膨大なデータの点と点を結びつけ、裏を取る気があるのはどうせジャーナリストだろう」
彼らの献身的なサービスに、お礼を言わなければなるまい。