最新記事

メディア

パナマ文書、巨大リークを専売化するメディア

生データはメディアしか読み解けないからメディアが扱うのだが、それは世界の人々にとって幸せなのか

2016年4月8日(金)19時03分
ポール・フォード(ニューリパブリック誌外部編集員、ポストライト社共同創業者)

”ビッグリーク”の時代 パナマ文書はリーク史上初のブランドに仕立て上げられた Simon Dannhauer-iStock.

 パナマ文書のニュースはもうご存じだろう。では、パナマ文書に専用ウェブサイトが用意されていることや、#panamapapers のハッシュタグもあることはご存じだろうか。ジャーナリストたちがパナマ文書をいかに「モノにした」か、ニューヨーク・タイムズがなぜパナマ文書について知らされていなかったのか、今回のリークの規模がいかにケタ違いか(文書にして1150万件、データにして2.6テラバイト)?

 パナマ文書には2つの側面がある。1つは、法律事務所モサック・フォンセカの内部告発者がもたらしたらしいナマの巨大データ、という側面。データのほとんどは、オフショア法人の設立と投資に関するもののようだ。その多くは公明正大だが、別の多くは世界から集まったドス黒い金だ。2つめは、ジャーナリストたちの協同作業による分析・調査・公開を経て、グローバル・ジャーナリズムの一大イベントになったという側面だ。

 今回のように、リークが製品のように扱われるのは初めてで、現実とは思えない。まるで新製品の発売だ。国境を越えたジャーナリスト・チームと洗練されたホームページ。リークがあって、計画が練られて、誕生したのが、ジャーナリズム印の「パナマ文書」というブランドだ。

panama160408.jpg


 ここには不気味なメッセージが込められている。ウィキリークスが暴露した外交公電などゴミだ、不倫サイト「アシュレイ・マディソン」の顧客データベースも問題外、それよりも2.6テラバイト分のナマの腐敗情報のほうがずっと凄い。

【参考記事】不倫サイトがハッカーに襲われたら


 まずはこのチャートを見てくれ、と彼らは言う。いちばん上の長いバーが今回のリークだ。どうだ、大きいだろう! 


 リーク情報の価値はいつからテラバイトで決まるようになったのだろうか?

 パナマ文書の発覚で、アイスランドの首相は辞任に追い込まれた。大したものだ、そしてこれはほんの序の口だ......。

 ここでの売り物は我々が日ごろから読んだり買ったりするニュースだけではなく、ジャーナリズムそのものだ、という気がしてならない。ブランド化された大量のリーク情報はジャーナリズムの新しい商品となり、報道機関の存在意義になる。彼らはこう言っているようでもある。「この膨大なデータの点と点を結びつけ、裏を取る気があるのはどうせジャーナリストだろう」

 彼らの献身的なサービスに、お礼を言わなければなるまい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ氏の自動車関税、支持基盤の労働者

ビジネス

2025年度以降も現在の基本ポートフォリオ継続、国

ビジネス

TSMC、台湾で事業拡大継続 新工場は7000人の

ビジネス

午後3時のドルは149円付近に下落、米関税警戒続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中