最新記事

タックスヘイブン

世紀のリーク「パナマ文書」が暴く権力者の資産運用、そして犯罪

史上最大級のリークと100を超えるメディアの調査報道が生んだ世界規模のスキャンダル

2016年4月5日(火)16時36分
ルーシー・ウェストコット

火元 パナマ市のモサック・フォンセカ法律事務所の看板 Carlos Jasso-REUTERS

 4月3日の日曜日、世界で100を超えるニュース媒体が一斉に、それまで知られていなかったある膨大な資料について報じ始めた。パナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した1100万件以上の内部文書だ。モサック・フォンセカは、世界の権力者や富裕層がパナマのタックスヘイブン(租税回避地)にペーパーカンパニーを設立し、資産隠しや麻薬・武器取引、脱税などに利用するためのアドバイスをしていたのではないか、と疑われている。

 モサック・フォンセカの40年にわたる秘密の記録を最初に入手したのはドイツの南ドイツ新聞と国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)。それを100ほどのメディアで手分けし、1年かけてウラを取ったのが今回の報道だという。モサック・フォンセカの内部告発があったとみられるが、リーク元が誰かは明らかにされていない。

【参考記事】HSBC秘密口座で世界に激震

 ICIJは、パナマ文書で名前の挙がった政治家や官僚や家族・友人の詳細なリストをもっている。そのなかには、カタールのハマド・ビン・ジャーシム・ビン・ジャブル・アール=サーニー前首相やハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニー前首長、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、バジャル・アサド大統領のいとこのラミとハーフェズ・マフルーフ、デービッド・キャメロン英首相の父親であるイアン・キャメロン......。

 これまでに公表されたのは全体のごく一部で、今後もどんな大物のどんな疑惑が世界を揺るがすか目が離せない。

国民だけに犠牲を強いて自分は......

 以下は、これまでに名指しされた大物とその「罪状」。ただし、不正行為があったかどうかは必ずしも明らかになっていない。

■シグムンドゥル・グンラウグソン(アイスランド首相) 

 グンラウグソンは英領バージン諸島のオフショア法人に数百万ドルを隠した疑惑をもたれている。パナマ文書によると、グンラウグソン夫妻は、2007年にウィントリスというオフショア会社を買い、アイスランドの3つの銀行にあった資産を隠したとされる。3つの銀行は、2008年の金融危機で破綻した。パナマ文書の内容を知った国民は怒りを爆発させ、月曜に首相の辞任を求めて大規模なデモを行った。

■ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領) 

 パナマ文書によると、プーチン関連とみられる隠し財産が20億ドルにのぼる。プーチン本人の名前は出てこないが、プーチンの幼なじみで長女の名付け親でもあるチェリストのセルゲイ・ラルドゥーギンの名前がある。文書によると、ルドゥーギンはサンクトペテルブルグのプライベートバンク、ロシア銀行の株式の3.2%と、ロシア最大のテレビ広告代理店、ビデオインターナショナルの株式の12.5%を保有していることになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.3%

ワールド

ノルウェーGDP、第3四半期は前期比+0.5% 予

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中