【再録】現代史上、最も名高い2人の新旧米国務長官
アフガニスタンがどういう結果に落ち着こうと、私たちは(合意を)実行しなければならない。そのためには国際的な法的枠組みが不可欠だが、そのような枠組みはまだない。この点は、国務長官にとって大きな試練になるだろう。
いずれにせよ、その枠組みの中で議論が交わされるのは結構だが、「私たちは戦争を終わらせたいのか」「私たちはいつ戦争を終わらせられるのか」といった議論を行うべきではない。現政権が一刻も早く戦争を終わらせたいと考えていることに、私は疑問の余地がない。そう考えない理由などあり得ないからだ。
――一般の世論では、外交と軍事力、ハト派とタカ派を単純に2分して考える見方があるように思える。アメリカ国民がアフガニスタンとイラクでの戦争、イランとの話し合いについて考える上で、どういう点を頭に入れてほしいか。
クリントン (アフガニスタンに)兵士を追加派遣する一方で、外交的・政治的努力も強めていることを知ってほしい。アフガニスタンの人々と協力し、基本的な行政サービスの質を向上させるためにできる限りのことをしている。
そうすることで、(イスラム原理主義の反政府勢力)タリバンの影響力を弱められると戦略的に判断している。すべては結び付いている。もはや(外交と軍事を)二者択一で考えられる時代ではない。
キッシンジャー 理解しておくべきなのは、外交上の話し合いの場を設ける以上、アメとムチを組み合わせることが不可欠だということだ。相手が常に損得を計算して振る舞うことも頭に入れておかなくてはならない。
重要なのは、アメとムチをうまく提示すること。さあこれから私たちが譲歩しますよ、などと宣言するような稚拙な交渉しかできない人物を話し合いの場に送り込んではならない。こちらが際限なく譲歩するという印象を与えれば、ほぼ確実に相手は言うことを聞かない。いま北朝鮮との関係がそうなっている。10年前からずっとそうなのだが。
政府のすべての行動は、緊密な連携の下で進める必要がある。外交交渉の担当者は、この点を理解していなければならない。この意味で、ヒラリーの役職は政府の中で最もエキサイティングな仕事と言っていい。
クリントン ただし、その仕事は音楽のソリストみたいに独りでできるものではない。(国務長官は)オーケストラの指揮者のような存在でなくてはならない。
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[2009年12月30日号掲載]