最新記事

インタビュー

【再録】現代史上、最も名高い2人の新旧米国務長官

2016年3月30日(水)15時50分
ジョン・ミーチャム(米国版編集長)

 国防総省に比べると、国務省やUSAIDは予算の獲得が格段に難しい。目下の厳しい財政状況では、必要な予算を獲得することがとりわけ難しい。それでも、担わなければならない責任があることに変わりはない。

 こういうストレスは、戦時にはいつも付いて回るものだ。アメリカの若い兵士たちが身を危険にさらしているとき、文民たちも同様に危険な場に出掛けなければならないケースが増えている。例えばアフガニスタンの農業を支援するとすれば、戦闘が終結してすぐに農業の専門家が現地入りすることになる。

キッシンジャー ベトナム戦争以降の40年間、戦時のアメリカでは、戦争をすべきか否かが国内で議論の対象になるという特殊な状況を経験してきた。いま最も重要なのは、戦争の戦術に関しては意見の相違があってもいいが、戦争の正当性そのものについて意見の対立がないようにすることだ。

 その出発点として共有すべき認識がある。それは、戦争を行っている政権は例外なく、その戦争を終わらせたいと考えているのだということだ。

クリントン そのとおり。

キッシンジャー (戦争を戦うことによって)最も大きなリスクを負っているのは、そのときの政権にほかならないのだから。

 ベトナム戦争やイラク戦争などの戦時の議論をみると、戦争を終わらせることと軍隊を引き揚げることが同一視されてきた。軍を撤収させることが第1の、もしかすると唯一の出口戦略であるかのように言われてきた。

 本来、最良の出口戦略は戦争に勝つこと。あるいは外交で相手を説得すること。あるいは戦いが自然に終息することのはず。それなのに、米軍部隊の撤収を出口戦略と同一視すれば、(なぜ戦争を始めたのかという)政治的な目的をないがしろにする結果を招く。

 そうなると、時の政権が戦争終結のために十分な努力を払っていないという中傷を受け、最良の判断とは異なる行動を取らざるを得なくなる。そういう事態に陥ることがしばしばあった。

 現在の戦争に関してオバマ政権に対する私の立場は、いま述べたような基本認識に基づいている。もっとも、一つ一つの政策の詳細までに賛成か反対かはまた別の問題だが。

 ヒラリーが挙げた第2の点は文民部門に関してだったが、第3の点として私が指摘したいのは、(戦争を終わらせる上で)いずれかの時点で外交上の落としどころを見つけなくてはならないということだ。当事者が受け入れて実行できる合意点を見いだす必要がある。ベトナム戦争後にひどい結果になったのは、私たちが約束した内容を守らなかったからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中