最新記事

インタビュー

【再録】現代史上、最も名高い2人の新旧米国務長官

2016年3月30日(水)15時50分
ジョン・ミーチャム(米国版編集長)

クリントン まさにそのとおり。

――国務長官にとって国際政治の理論はどういう意味があるのか。

クリントン この点はヘンリーの専門だと思うけれど、理論は外交の枠組みや方向性、歴史の教訓を教えてくれると私は思っている。

 ただし、過去のパターンが参考になる面はあっても、まったく同じ局面は2つとない。型にはまった考え方をせず、状況に俊敏に反応し、直感を研ぎ澄ませてチャンスを見逃さずに振る舞い、その上で実際の行動を説明する理論をつくり上げる......というのが正直なところかしら(笑)。

キッシンジャー 私は学者出身なので、理論には関心がある。ただし(実務家と違って)学者は、目の前の情勢に適合した理論を構築するためにたっぷり時間をかけられる。それに学者という立場であれば、(実現性を考えずに)一刀両断の解決策を唱えても構わない。

 一方、国務長官にとって、問題を一発で解決できるような解決策はまずあり得ない。問題を解決するためには、一つ一つ段階を踏むしかない。

「重要なのはアメとムチをうまく提示すること」――キッシンジャー

――2人とも戦時に国務長官を務めている(キッシンジャーはベトナム戦争終盤の国務長官)。戦争を戦っているときに外交を行うことに特有の難しさはあるのか。

クリントン オバマ大統領は(前政権からイラクとアフガニスタンの)2つの戦争を引き継ぎ、自分で生み出したわけではない問題について早期に判断を下すことを強いられた。(しかしその後)大統領はしっかり時間をかけ、問題を根本に立ち返って検討するプロセスを踏んだ。その点を私は高く評価している。

 イラクの戦争は終息に向かっているが、それに伴って米軍が引き揚げれば、国務省と国際開発庁(USAID)の担う役割がますます大きくなる。

 一例を挙げると、いまイラク警察の訓練を実施している米軍は、この任務を行うために必要な手だてをたくさん持っている。大規模な兵力はもとより、装備も豊富だし、自由に使用できる予算もふんだんにある。国務省とUSAIDにはそういう手だてがないが、私はその責任を引き受けなくてはならない。重責に気が遠くなる。

 アフガニスタンに関しては、どうやって前に進むべきか時間をかけて検討してきた。軍と文民部門の双方で意見が一致したのは、軍事力だけでは成功を収められないということ。当たり前の結論に聞こえるかもしれないが、このように結論づけたことにより、国務省とUSAIDの直面する課題が山ほど浮上してくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

8月米卸売在庫横ばい、自動車などの耐久財が増加

ビジネス

10月米CPI発表取りやめ、11月分は12月18日

ビジネス

ミランFRB理事、12月に0.25%利下げ支持 ぎ

ワールド

欧州委、イタリアの買収規制に懸念表明 EU法違反の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中