難民収容所で問われるオーストラリアの人権感覚
ボートピープルの収容施設はナチスドイツ並み?劣悪な環境で精神を病む難民が出ているとの報告も
ナチス並み? ナウルの移民収容所で起きている「児童虐待」を移民局に訴えるデモ(シドニー) Jarni BlakkarlyーREUTERS
難民認定を求めて海を渡ってくるボートピープルの密航に悩まされるオーストラリア。最近は国内からのこんな批判にもさらされている。難民申請者は強制収容所に送られて拷問を受ける──こうした非難に対して、当局が示した強気の反論が思わぬ方向で炎上している。
議論の発端はオーストラリアがナウルなど第三国に設置した難民収容所。入国しようとする外国人の一時移送先であるこの施設の環境をめぐって、「扇情的な言い掛かり」がつけられている......。「不正確」な「嘘」に対して、マイケル・ペズーロ移民局長が「事実関係を正す」として出した声明が逆に火に油を注いでしまった。
「難民収容所を『強制収容所』に例える主張がある。ナチスドイツであったとされる(ユダヤ人の)強制収容に対する一般市民の感覚の麻痺や無関心を示唆し、収容施設が『拷問』の場だとにおわせる主張だ。こうした主張は極めて不快で根拠がなく、明らかな誤りだ」
移民局のウェブサイトに掲載されたこの声明が強烈な批判を巻き起こした。ナチスドイツで「あったとされる」という表現がナチスによる残虐行為を事実と認めていないというのだ。
ツイッターでも当局への批判の声が噴出。「移民局に助言しよう。ナチスドイツという言葉の隣に『......とされる』を付けるのは不適切」「ホロコースト(大量虐殺)が『あったとされる』なんて、移民局はナチスの擁護者だ」。こうした投稿が相次ぎ、移民局は否定と釈明に追い込まれた。
収容所批判で刑事訴追?
当局が強硬な反論を行った背景には、難民収容所をめぐる政府の決定に対する反発がある。乳児を含む難民申請者200人以上を太平洋の島国ナウルの難民収容所に送るというものだ。ペズーロは「子供を危険な場所に送ることは決してない」と主張。
だが移民局の医療顧問は2月、収容所生活によって子供の精神面に「有害な」影響がもたらされると上院公聴会で証言している。
オーストラリアはナウル島とパプアニューギニアのマヌス島に難民収容所を設置しているが、既に劣悪な環境で収容者が精神を病んでいるとの報告もある。
国連は収容者が過酷で非人道的な環境にあると指摘。オーストラリアの政治家からも、ナウルの収容所の環境は難民申請者にとって「適切でも安全でもない」との声も上がっている。