最新記事

中東

イランの弾道ミサイル実験は核合意違反にならない?──イスラエルは激怒

核開発を放棄すると約束したのに弾道ミサイル実験を続けるイランの真意は

2016年3月14日(月)17時30分
ジャック・ムーア

挑発 ミサイルには「イスラエルを葬り去れ」の文字が farsnews-Reuters

 イランが先週行った弾道ミサイルの発射実験は、昨年7月に米英ロなどの6大国と交わした歴史的核合意には一切、違反していない──イラン国営テレビに政府幹部は語った。

「イランは軍事演習の一環で過去数日の間にミサイルのテスト発射を行ったが、これは核合意に反するものではない」と、外務省スポークスマンのフセイン・ジャベリ・アンサリは言った。

 核合意は、イランが核開発を放棄すれば、欧米も経済制裁を解除するというもの。だが、弾頭ミサイル開発の禁止は合意の対象になっていない。もし発射したのが核搭載可能なミサイルだったとわかれば国連決議違反になるが、イラン、とくに革命防衛隊はお構いなしだ。

【参考記事】プーチンがイラン核合意を支持した思惑

 ファルス通信によると、イランの革命防衛隊は先週火曜、北部のアルボルジ山脈から1400キロ先のオマーン湾を目がけてミサイルを発射した。

 米国務省は翌日、ジョン・ケリー国務長官がイランのムハンマド・ジャバド・ザリーフ外相とこの件について話した、とだけ発表した。

 イランメディアの報道によると、ミサイルには「イスラエルを葬り去れ」とヘブライ語で書いてあった。革命防衛隊のアミル・アリ・ハジザデ准将は、ミサイルはイスラエルを攻撃するために開発されたものだと言った。

「何があっても、イランがミサイル開発を辞めることはない」と、准将は言う。「革命防衛隊はイランのミサイル開発のいかなる制限にも同意していない。どんな侵入者に対しても自国を守る」と、言った。

 イランの強硬派はいつも、仇敵イスラエルの破壊を呼び掛けている。イスラエルとしては穏やかではない。核合意にも最後まで反対だった。イランのイスラエルに対するいかなる軍事行動も先制攻撃で叩くと、公言している。

米、イスラエルに過去最大の武器供与提案──イラン核合意の償い?

 イスラエルのネタニヤフ首相は即座に声明を出し、「国連安保理常任理事国の5カ国は直ちにイランを罰するべきだ」「常任理事国の力も問われている」

 核合意で遠ざかったと思ったイランとイスラエル衝突のシナリオはまだ目の前にある。その点では、一貫して合意い反対し続けたイスラエルのほうが正しかったのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中