最新記事

核問題

米、イスラエルに過去最大の武器供与提案──イラン核合意の償い?

「補償」を受け取ればイランの核開発を認めたようなものとして、イスラエルは米提案を拒否

2015年7月21日(火)18時30分
ジャック・ムーア

亀裂 最近、関係悪化も噂されていたオバマとネタニヤフ(写真は2013年) Jason Reed-REUTERS

 米政府はイスラエル政府に対して広範にわたる武器供与を計画していると、イスラエルのメディアが伝えた。イランとの核問題協議で先週、アメリカなど主要国がイランと合意したことに対するイスラエルの怒りを鎮めるためだ。合意では、イランの核開発に制限を設けるのと引き換えに、イランに対する経済制裁を解除する。

 イスラエルは過去30年間にわたってイランの核開発計画に反対してきた。首相のベンヤミン・ネタニヤフは今回の合意に激怒し、これを「歴史的な過ち」で、イランに「核兵器への確かな道」を与えるものと批判している。

 米政府は現在、イスラエルの不安を和らげるため、両国関係の歴史で最大級の武器供与を検討中だ。もし実現すれば「前代未聞」と、イスラエルのテレビ局「チャンネル2」は報じている。

 同局の報道によれば、米政府の提案には、イスラエル軍が保有していない高性能兵器や高度なテクノロジーが盛り込まれており、オバマ政権はイスラエル側に概要を既に伝えているという。

 オバマ政権の国家安全保障担当大統領補佐官、スーザン・ライスは先週末、イスラエルのシモン・ペレス前大統領に電話をかけ、アメリカは大規模な武器提供の用意があると伝えた、とも報道された。2人は核合意についても意見を交換したが、ペレス前大統領は、イランが核査察の24日前に通告を受けることに不満を抱いていたという。

 イスラエル国防軍(IDF)の退役中佐ルーヴェン・ベン・シャロームは、アメリカとイスラエル両政府間の軍事協力はかつてないほど強固であり、今回の提案は、イスラエル国民をなだめるためのものだろう、と語る。彼は、アメリカとイスラエルの軍事関係を戦略的レベルで管理していた人物だ。

 イラン核合意に対する「補償」としての武器供与提案を受けて、ネタニヤフは先週末、米ABCニュースの討論番組に出演し、今回の核合意を改めて非難した。そして、アメリカからの補償案についても、イランとの核合意をイスラエルが認めたことになりかねないとしてはねのけた。

「誰もがイスラエルに対する補償を口にする。しかし、もしこの合意が本当にイスラエルと近隣諸国に安全をもたらすものなら、どうして補償の必要があるのだろう」と、ネタニヤフは疑問を投げかけた。「そもそも、(イランという)テロリスト支援国家と向き合っているわが国に対し、どんな補償ができるというのか。相手は、イスラエルの破壊を誓い、核兵器を手に入れようとしている国なのに」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中