全人代政府活動報告は誰が書くのか?――習近平は事前にチェックしている
しかし習近平政権としては北朝鮮問題や南シナ海問題などに迅速に対応するため、どうしてもこの軍事大改革を断行しなければならなかった。そのため軍事的指揮系統に関して、習近平を中心に求心力を高めなければならないのだ。なんと言っても、この軍事大改革で習近平は「軍の最高司令官」になったからである。
「核心化」を、習近平の名誉欲のためのごとく説明するのは、中国の軍事戦略を見誤らせるという、日本国民にとっては決定的な不利益をもたらす。そのような甘いものではないこともまた、肝に銘じてほしい。
日本の一部のメディアも中国研究者も、「日本人にとって耳触りのいいこと」を発信しようとする傾向にある。その方が視聴率が取れるし、また研究者の方も注目を集めることができると望むからだろう。この傾向は、「可愛いのは自分であって、真に日本国民を大切だとは思っていない」という姿勢が招いたものではないだろうか。気持ちは分からないではないが、こういった現象を、日本国民のために憂う。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。