「トランプ暴言」に海外外交官たちが米国へ異例のイエローカード
「欧州の外交官たちはトランプ氏の台頭について、信じられないという様子でいつも聞いてくる。今ではパニックとなりつつある」と、北大西洋条約機構(NATO)のある米高官は匿名を条件にそう話した。
「EU(欧州連合)が実存的危機に直面し、米国の支援をかつてないほど必要としているなかで、米国が内向きになることを彼らはいつも以上に心配している」と語る。
100人を超える米共和党外交政策の重鎮たちは公開書簡で、トランプ氏の提案は自国の安全保障を損なうものだとして同氏への反対を表明している。
質問の嵐
ブリードラブ在欧米空軍司令官は1日、大統領選をめぐり、米国の同盟諸国の間で懸念が高まっていると指摘。トランプ氏を名指しこそしなかったものの、「今回の大統領選では総じて、欧州の当局者から多くの質問を受けている。候補者たちの討論会をこれまでとは非常に違うものと受け取っているようだ」と語った。
私的な外交関係については具体的には明かさなかったものの、一部の他国当局者はトランプ氏に対する自国政府の懸念を認めた。
英当局者は1月、「ドナルド・トランプ氏の言うことは、私の考えでは、間違っているだけでなく、過激派に勝利するために必要な努力を実際に困難にさせている」とのキャメロン首相の発言を強調した。
中国の当局者は先週、外務省報道官の発言に言及。中国製品に高い関税を課すと提案したトランプ氏の発言を中国は懸念しているかと問われた華春瑩報道官は、特定の候補者についてはコメントを拒否。ただ、中国と米国は国際的な政治・経済の安定を維持する「主な責任」を負っていると強調した。
イラン、イラク、サウジアラビア、ベトナムなど、トランプ氏の標的となっている他の国々の当局者はコメントしなかった。
米国の外交専門家数人も、他国の外交官から不満を聞いたと話す。
「私が話をした外交官は皆、トランプ現象に驚き、心配している。特に中東と欧州の外交官は」と、ジョージ・W・ブッシュ政権下の2001─09年に米国家安全保障会議(NSC)で中東問題を担当し、現在は外交問題評議会シニアフェローのエリオット・エイブラムス氏は述べた。
(Mark Hosenball記者、Arshad Mohammed記者、Matt Spetalnick記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)