ボストンのリベラルエリートが、サンダースを支持しない理由
2008年の予備選でオバマを支持したボストン近郊の左派知識層は今回ヒラリー支持に変わっている
変わる判断基準 今月1日のマサチューセッツ州予備選では接戦の末にヒラリーが勝利した Jonathan Ernst-REUTERS
3月1日の「スーパーチューズデー」で、マサチューセッツ州の民主党予備選は激しい接戦になった。
直前の世論調査ではヒラリー・クリントンのほうがバーニー・サンダースよりも有利と出ていたが、近年、世論調査の数字はあまり信用できなくなってきている。世論調査のほとんどは自宅へかける電話調査だが、それに応じられるのは、専業主婦か引退した高齢者くらいだ。現代のアメリカの若者は、スマートフォンだけしか持たず、自宅に電話がない。だから、伝統的な調査方法には若者の意見がほとんど反映されていない。一方で、調査対象を抽出しないネットの世論調査があてにならないのは言うまでもない。
選挙予測の専門家たちは、こうした時代の変化に対応し、近年ではフェイスブックやツイッターを分析している。フェイスブックの「いいね!」の数では、マサチューセッツ州では圧倒的にサンダースが有利だった。
それだけでなく、マサチューセッツはサンダースに有利な条件が揃っていた。先月の予備選でサンダースがヒラリーに20 ポイントの差をつけて圧勝したニューハンプシャー州やバーモント州に隣接し、ほぼ「地元」と言えること。そして、米世論調査企業ギャラップ社によると、マサチューセッツはサンダースの地元バーモントの上を行く、「全米でもっともリベラルな州」である 。ハーバー大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)を筆頭に有名大学が多く、サンダースの支持基盤である大学生の活動が盛んだ。
サンダース陣営は勝利を確信していたし、ヒラリー陣営も選挙当日に「マサチューセッツで勝つことは期待していない」とメディアに答えていたくらいだ。ところが、90%以上開票されても「当確」が出ない接戦になり、結果的に50.1%対48.7%という僅差でヒラリーが勝利した。
なぜサンダースは、マサチューセッツ州でヒラリーに勝てなかったのか?
今回の選挙結果の詳細 を、オバマとヒラリーが激しく争った2008年の予備選の選挙結果を比較してみると、あることに気付く。2008年にオバマを選んだボストンとその近郊が、今回はヒラリーを支持していたのだ。8年前にヒラリー支持だった地域はサンダース支持に、オバマ支持だった地域はヒラリー支持にシフトしている。これは、今回の予備選で有権者の選択が変化したことを示している。
目を引くのは、リベラルなマサチューセッツの中でも、特に「リベラル」として知られているケンブリッジ市とレキシントン町だ。2008年の予備選では、州全体ではヒラリーが勝っているのだが、この2つの地域では、「若き改革者」のオバマを選んでいた 。ところが、今回はサンダースではなくヒラリーを選んでいる。しかも、レキシントン町では37ポイントもの大差が付いている。