【再録】J・K・ローリング「ハリー・ポッター」を本音で語る
――でも90年に、マンチェスターからロンドンに向かう列車の窓から野原の牛を見ているうちに、ハリーのイメージが浮かんできた。本当に魔法みたいな話だが。
そう、本当にね。アドレナリンが大量に流れるのを体で感じたわ。いいアイデアが浮かんだサイン。体で感じるの。そのときは今までにないぐらい強烈だった。
ハリーのイメージが怒濤のように浮かんできた。自分が魔法使いだって知らない男の子。おまけに、おでこには奇妙な傷跡......。どうして自分が魔法使いだって知らないの? その傷はどうしたの? 答えを見つけていかなくちゃって思った。すべてを創作するって感じじゃなかった。
――このシリーズの大きなテーマの一つに、子供たち、とくに普通の子供たちの無力さがある。
ええ、そのとおり。
――それが若い読者に支持される理由の一つなのか。
だから、いつでも、そしていつまでも、魔法や秘密のパワーを見つけたり、日常で実現できないことを描いた物語が存在する。大人も同じ。心の中の小さな声が、世の中をあるべき姿に変えられたらって願っている。
大人になることは、自分の無力さを自覚することでもある。子供は「大人になればきっと」って思うけれど、大人になったとたんに物事はそれほど簡単じゃないって気づく。むずかしくても、トライしてみる価値はあるのだけど。
――「ハリー・ポッター以後」のあなたは何をしているだろう?
まだ何も決めていない。でも、執筆活動を続けているのは確かね。何も書かないでイライラせずにいられるのは、せいぜい1週間が限度。一種の麻薬よ。
アイデアはある。全部、クズみたいなものかもしれないけど。
※このインタビューを行った記者の回顧録はこちら:【再録】J・K・ローリングはシャイで気さくでセクシーだった
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[2006年2月 1日号掲載]