「ホームレス」を生み出さない社会を目指して
パワフルな海外ボランティアに触発されて
転機が訪れたのは高校2年のとき。ホームレス問題についての活動を認められてボランティア・スピリット賞(アワード)を受賞し、米国ボランティア親善大使に選ばれたんです。それまでは自分の活動に自信がなかったのですが、そこで初めて認められたという手応えをつかめた感じですね。
ワシントンD.C.の表彰式では各国の親善大使と交流できましたが、みんなの活動のパワフルさに圧倒されました。同世代の子が1,000万円くらい寄付金を集めていたり、企業を巻き込んで商品パッケージにボランティアの広告を載せてもらったりしている。
同世代でもここまでできるんだと感嘆しつつ、改めてわが身を振り返って、私が本当にやりたかったのはホームレス問題の根本的な解決なんだと思い至りました。それまで私がしていた啓発や炊き出し参加などのボランティアはホームレス状態を改善するだけの対症療法的なものです。もちろんそれはそれで意味のあるものだけれども、私がしたいことは日本の社会構造をホームレス状態を生み出さないものにしたいという、ホームレス問題の根本的な解決です。Homedoorのビジョンが固まったのはこのあたりでしたね。
その後、ホームレス問題の研究が進む大阪市立大学に進学し、2年生のときにHomedoorを立ち上げたというわけです。
自己完結的に小ぢんまりと終わってしまいそうだった活動を転換して、企業や地域と連携して実行性の高い活動へ発展させることができた。世界のボランティア活動家と交流できたことで得られた成果は大きかったです。
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(2015.6.23 大阪・コクヨ梅田オフィスにて取材)
※インタビュー後編:事業に必要な人を口説き落とせる、それが本当のリーダーシップ
NPO法人「Homedoor(ホームドア)」は「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作る」ことをビジョンに掲げ、野宿生活者(ホームレス)をはじめとする生活困窮者への就労支援・生活支援、ホームレス化予防事業、ホームレス・生活保護問題に関する啓蒙活動などに取り組んでいる。拠点は大阪市北区。2010年4月設立。http://www.homedoor.org
* 川口氏によれば、日本の労働人口に占める日雇い労働者の割合は1.7%程度だが、ホームレスの人で日雇い労働の経験を持つ人は4分の1に上る。また、ホームレスの人には非正規雇用者も多く、条件の悪い仕事が社会的弱者に押し付けられている状況だと指摘する。
川口加奈(かわぐち・かな)
1991年、大阪府高石市生まれ。大阪市立大学卒業。14歳でホームレス問題に出会い、ホームレス襲撃事件の根絶をめざし、炊出しや100人ワークショップなどの活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクルHUBchari事業等でホームレスの人や生活保護受給者累130名以上に就労支援を提供する。世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)のGlobal Shapersや、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013若手リーダー部門にも選出される。