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ドイツを分断する難民の大波

2016年2月24日(水)17時00分
ミレン・ギッダ

 その2日後、メルケルは難民認定者にも一時的な滞在を許可するビザを与えるだけで、シリアとイラクの治安が回復したら、本国に帰ってもらうと説明した。ただし、ビザの期限が切れても、本国に帰還できない場合、永住ビザを申請できるかどうかについては明言を避けた。

 早期の治安回復は望めないとの見方が優勢だ。「メルケルの発表にはちょっと驚いた。どこまで現実的な施策なのか」と、レングスフェルトは懐疑的だ。

 伝統的にリベラルな北欧諸国もメルケルに背を向け始めている。スウェーデンは昨年11月、入国管理の強化を発表した。

【参考記事】閉ざされた「愛の橋」 寛容の国スウェーデンまで国境管理

 大量流入の現実を前に、今や西ヨーロッパ中が難民支援の情熱を失いつつあるようだ。多くの難民にとって、ドイツは最後の頼みの綱だった。だがヨーロッパで最も豊かで最も寛容な国でさえ、雪崩打つ難民にはお手上げだ。

 メルケルが政治的判断から政策を転換すれば、難民が行き場を失うと危惧する声もある。だが、たとえ国境が封鎖されても、難民の波は止まりそうもない。

[2016年2月23日号掲載]

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