長期金利が再びマイナス、運用難で投資家の「金利狩り」加速
世界的な景気減速懸念が強まる中では、昨年利上げに動いた米国でさえ、今年に入って金利が急低下。18日の米債市場で、10年債は1.74%となっている。2%を大きく下回る金利水準では「なかなか手が出せない」(国内生保・運用担当者)という。
というのは、日本の機関投資家にとっては、円金利の低下もあってドルの調達コストが上昇しているからだ。円投/ドル転スワップによるドル調達コストは、9日にこれまで投資対象として人気があった米国債5年物の利回りを一時上回り「逆ザヤ」水準に達した。外債投資には円高リスクもある。
海外の投資家は、円投/ドル転スワップで発生しているベーシス(ドル調達の上乗せ金利)のおかげで、マイナス金利で円を調達できる。調達金利よりマイナス金利幅の小さい日本国債で運用すれば利益が出るが、国内投資家はそうはいかない。
日本株投資にもリスク
株式も、低金利化する債券との比較で魅力が増す商品だ。東証1部銘柄の配当利回りは1.81%(19日終値ベース)。日経平均<.N225>の予想株価収益率(PER)は14倍前半、株価純資産倍率(PBR)は約1倍とバリュエーション上でも割安感が漂う。
企業が長期間の資金を低金利で調達できるようになるのは、マイナス金利政策のメリットの1つだ。企業活動が活発化し、業績が上向けば株価の追い風となる。
しかし、今の日本株投資にはリスクもある。ドル/円が再び113円台を割り込んでおり、円高による業績悪化が懸念されているためだ。「3月期末も近づいてきており、バリュエーションが割安といっても手を出しにくい」(国内投信・運用担当者)という。
外債投資が増えて円安、株式投資が増えて株高というのが、マイナス金利導入時に期待されたシナリオであった。しかし、マーケットの初期反応は円高・株安。「マイナス金利の影響を見極めるには、もう少し時間が必要」(ブラックロック・ジャパン取締役リテール営業部門長の浜田直之氏)ではあるものの、投資家のポートフォリオリバランスは国内債偏重という思わぬ形で進んでいる。
(伊賀大記 取材協力:DealWatch債券チーム 編集:田巻一彦)