最新記事

マイナス金利

長期金利が再びマイナス、運用難で投資家の「金利狩り」加速

2016年2月20日(土)15時36分

 世界的な景気減速懸念が強まる中では、昨年利上げに動いた米国でさえ、今年に入って金利が急低下。18日の米債市場で、10年債は1.74%となっている。2%を大きく下回る金利水準では「なかなか手が出せない」(国内生保・運用担当者)という。

 というのは、日本の機関投資家にとっては、円金利の低下もあってドルの調達コストが上昇しているからだ。円投/ドル転スワップによるドル調達コストは、9日にこれまで投資対象として人気があった米国債5年物の利回りを一時上回り「逆ザヤ」水準に達した。外債投資には円高リスクもある。

 海外の投資家は、円投/ドル転スワップで発生しているベーシス(ドル調達の上乗せ金利)のおかげで、マイナス金利で円を調達できる。調達金利よりマイナス金利幅の小さい日本国債で運用すれば利益が出るが、国内投資家はそうはいかない。

日本株投資にもリスク

 株式も、低金利化する債券との比較で魅力が増す商品だ。東証1部銘柄の配当利回りは1.81%(19日終値ベース)。日経平均<.N225>の予想株価収益率(PER)は14倍前半、株価純資産倍率(PBR)は約1倍とバリュエーション上でも割安感が漂う。

 企業が長期間の資金を低金利で調達できるようになるのは、マイナス金利政策のメリットの1つだ。企業活動が活発化し、業績が上向けば株価の追い風となる。

 しかし、今の日本株投資にはリスクもある。ドル/円が再び113円台を割り込んでおり、円高による業績悪化が懸念されているためだ。「3月期末も近づいてきており、バリュエーションが割安といっても手を出しにくい」(国内投信・運用担当者)という。

 外債投資が増えて円安、株式投資が増えて株高というのが、マイナス金利導入時に期待されたシナリオであった。しかし、マーケットの初期反応は円高・株安。「マイナス金利の影響を見極めるには、もう少し時間が必要」(ブラックロック・ジャパン取締役リテール営業部門長の浜田直之氏)ではあるものの、投資家のポートフォリオリバランスは国内債偏重という思わぬ形で進んでいる。

 (伊賀大記 取材協力:DealWatch債券チーム 編集:田巻一彦)

[北京 25日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

賃金上昇とサービスインフレが依然リスク=フィンラン

ビジネス

日本企業、トランプ氏関税に懸念 十倉経団連会長「甚

ワールド

中国、麻薬対策で米と協力継続の用意 外務省が声明発

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、大幅な2%割れに警戒を=ポルト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中