ドル/円は安値圏で「神経戦」、介入含めた政策対応で思惑交錯
ただ、短期筋の間でも「前のめりでドル売り/円買いのポジションを組んでいる人は必ずしも多くない」(米系金融機関)との指摘もある。昨夏の人民元引き下げ後の混乱や、市場の失望を招いた12月欧州中央銀行(ECB)理事会後のユーロ急騰、年初からの荒れ相場と、相場の急変動が続いたことで、投機筋の多くは体力を消耗しているという。
<3月までに110円割れの予想>
ドル/円は、約2週間で10円の円高が進んだ。為替の動きが激しくなっているのは、市場参加者が少なくなっていることも大きな要因だろう。休暇明けの東京市場では、久々の111─112円台で始まったものの、輸入企業の積極的なドル買いは出なかったもよう。
複数のFX会社からは「値動きの激しさの前に、個人投資家の間では手控えムードが出ている」との指摘が聞かれた。
先行きの見通しとしては、円高の予想が強まってきている。三菱東京UFJ銀行・チーフアナリスト、内田稔氏は、日米金利差からみれば2014年以降の適正水準は、110円割れだったと指摘する。
だが、米利上げや日銀緩和への期待で10円以上、押し上げられていたと分析。政策期待が後退する中で、年度末のリパトリエーション(資金の本国還流)や投機的な円買いが加われば、3月末までに107─108円程度までの下落もあり得るとみている。
みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏も、歴史的にドル/円の上値めどは企業物価ベースで見た購買力平価と重なると指摘。これが今は100円であるほか、経済協力開発機構(OECD)や世界銀行算出の購買力平価は105円だとして、3月末までに「100─105円への下落があってもおかしくない」と話している。
この一方で、短期的には、日本当局による為替介入への思惑が浮上している。先進国の通貨安誘導を目的とした為替介入は「禁じ手」だが、急激な為替変動を押さえるための「スムージング介入」まで排除されているわけではない。「2週間足らずで10円幅という急激な円高進行は、為替介入を正当化する」(邦銀)との声も出ている。
各国の協調介入でなければ、効果は限定的との見方もあるが「実際に為替介入があれば、ドル/円は少なくとも2─3円は吹き上がる」(国内金融機関)との見方もある。
ドルショートを組んでいる投機筋の間では、政策発動に備え、ドル買い戻し/円売り戻しのポイントを現行相場に近づける動きが観測され「反発の際には、上げ足が速まりそうだ」(国内金融機関)との指摘もある。
りそな銀行のシニアクライアントマネージャー、尾股正寿氏は、目先の相場について「適当な水準が誰にもわからず、上下に振れやすくなっている」と話していた。
(平田紀之 編集:田巻一彦)