だから台湾人は中国人と間違えられたくない
2010年6月に「両岸経済協力枠組協議(ECFA)」が締結されたことで、こうした不法行為はなくなると期待されたが、台湾の企業家たちの被害は一向に減らなかった。前出の「新唐人」(2011年10月2日放送)によれば、ECFA締結の後、被害を受けた台湾の企業家25人が合同で台湾立法院に陳情書を提出して支援を求めた。
抗議デモも2度行い、3度目の抗議デモを準備していたとき、台湾へ商用で訪れた中国の官僚からデモを取り消すよう脅迫電話を受けた。台湾の対中交渉窓口のひとつである「大陸委員会」が中国政府に異議を申し立て、「わが国では集会やデモは法律で保障され、憲法で定められた国民の権利です。政府は国民の集会の自由と権利を尊重します」と、懸念を表明した。
こうした被害が次々に発覚して台湾メディアで取り上げられるようになると、台湾世論から反発の声が上がり、中国への好感ムードが一気に冷めていったのだ。
それでも経済交流は進んだ。中国に対する警戒感をぬぐえないまま、今や台湾の輸出額の約4割は中国向けで占められ、中国へ進出した台湾企業は10万社にのぼっている。中国在住の台湾出身者も福建、広東、上海などを中心に100万人に達し、毎年の中台往来者総数は500万人規模にまでふくれあがっている。
中国政府は身内である「中国人」を最も冷遇する
それにしても、なぜ中国はこれほど「台湾人」に対して理不尽な扱いをするのか。
その疑問を解くカギがある。実は、中国には「中国人の区分」があるのだ。
「中国人」――中国国内に住む人
「同胞」――香港、台湾在住の人
「華僑」――海外在住で中国籍を所持する人
「華人」――海外在住で外国籍を所持する中国系の人
この区分は出入国管理上の便宜的な区分なのだが、それ以上に重要なのは、ひとたび政治的な問題が持ち上がると、処遇の優劣や処罰の程度に大きな格差が生まれる点にある。