中国は北朝鮮を説得できるのか?――武大偉氏は何をしに?
武大偉氏訪朝の目的は?
「では、武大偉が、このタイミングで北朝鮮を訪問した目的は何なのでしょう? 北朝鮮に到着したその日に、金正恩は今月8日から25日の間に地球観測衛星を打ち上げると発表しましたよね。あれは長距離弾道ミサイルの発射予告と同じだと世界は解釈しています。ということは、中国は北朝鮮のミサイル発射をとめることはできないということになりますか?」
筆者が次の質問に移ると、先方は「おもしろくない」という語調で答えてきた。
「ご存じのように、李源朝(国家副主席)が訪朝しても、政治局常務委員の劉雲山が行っても、あの若造は態度を変えませんでしたよね。武大偉の職位は、李源朝や劉雲山の職位とは比較にならないほど低い。その武大偉が行って、北を抑えることができるとでも思っているのですか?」
「いえ、思っていません。武大偉は六か国協議の座長ですから、その目的で行ったとしか考えていません。でも、今さら北が六カ国会議に賛同するなどということは考えられないでしょ?」
「そう思うでしょうね。あの若造は、ふつうの良識的行動などをする人物ではない。しかし、それでも武大偉がいかなる成果もなしに戻ってくるというようなことをするために訪朝したりすると思っていますか? 中国はそういうことは絶対にしない。表に出たからには、必ずその前に水面下で緊密な外交交渉があり、何らかの見通しがあったからこそ、メディアにも分かる形で行動する。おめおめ、手ぶらで帰ってくるのを知った上で訪朝したりなどはしませんよ」
なるほど――。
ということは、中聯部(中国共産党中央委員会対外連絡部)が動いたことになる。中国では北朝鮮との関係は中国政府(国務院)系列の外交部(外務省に相当)ではなく、中国共産党が北朝鮮の労働党と交渉するという、建国以来の習わしがある。
アメリカはケリー国務長官を1月27日に訪中させて、中国政府高官と会談させた。
中国は中国共産党と朝鮮労働党が中聯部を通して接触している。
これらの接触の間に、表には出ない「交渉」が行われているということだろう。
その内容が何であったのかに関しては、中国政府関係者も言わないし、筆者も聞かない。
ここは限界であり、中国政府関係者から情報を取得する際のキーポイントだ。
聞いてはならないことは聞かない。
言ってはならないことは絶対に言わない。
だからこそ、一定程度までの情報なら取得できる、という状況が続いているのである。