最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

アイオワ州党員集会 共和党は正常化、民主党は異常事態へ

2016年2月2日(火)19時30分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 サンダースの善戦は、欧州の若者に支持された新しい左派勢力、例えばイギリスのコービン、スコットランドのスタージョン、スペインのイグレシアス(左派政党ポデモス党首)などの運動に類似している。北米で言えば2011年からの「占拠デモ」の精神を継承したものだろう。若年層の支持がどんどん伸びていて、例えばニューヨークやカリフォルニアでは旋風を巻き起こす可能性が指摘されている。

 ヒラリーは、ニューハンプシャー州はダメだとしても、それ以降はもう一州も負けられない覚悟で戦うことになる。同時に選挙戦術の大転換も必要になってくる。

【参考記事】ヒラリーと民主党を救った社会主義者サンダース

 今回の結果を受けた水面下の動きとしては、これでトランプが「自然に負けていく」ならば、共和党内で「トランプ降ろし」などという面倒なことをする必要はなくなる。今回1位のクルーズは、当面はルビオとの激しい舌戦に入っていくだろうが、この両者で長期戦をすれば、余程のスキャンダルでも出ない限りは、ルビオが優位となるのではないだろうか。

 いずれにしても、共和党の予備選が正常化に近づいた一方、民主党の予備選が異常事態に突入したという見方ができる。

 そして、ここへ来てにわかに現実味が出てきたのが、ブルームバーグ前ニューヨーク市長の出馬問題。ブルームバーグは共和党から無所属に転じた市長だが、それ以前には民主党員だった時期もある。政策は現実派で、また銃規制論のシンボル的な存在でもある。常識的には「中道リベラル」という立ち位置からヒラリーと票を食い合う関係にある。

 しかし万が一、民主党がこのままサンダースに傾斜していくとすれば、中道左派の票の受け皿はなくなってしまう。その場合は、ブルームバーグが「中道実務家」の第三勢力として出馬すれば勝機はあるかもしれない。もっと言えば、社会民主主義を自称するサンダースが大統領になるぐらいなら、ブルームバーグが出馬して「リベラル票の分裂選挙」となって、例えば共和党のルビオを勝たせても構わない――そんな考え方にブルームバーグ周辺が傾いていく可能性はある。

 来週(現地時間9日の火曜日)のニューハンプシャー州予備選の注目点は、トランプ人気がここでも翳りを見せるのか、またルビオの支持上昇のトレンドが続くのか、そしてヒラリーがサンダースにどれだけの差を付けられるのか、といったところ。見所はかなり絞られてきた。

筆者・冷泉彰彦氏の連載コラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中