最新記事

東アジア

中国は北朝鮮をめぐり、どう動くのか?

2016年1月13日(水)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 中韓蜜月は、夢のごとく消え去っていったのである。

中国は今後どうするのか?

 では中国は「日米韓」というブロックおよび北朝鮮と、どのような距離を取っていくのだろうか?

 まず確実に言えるのは、国連安保理などで北朝鮮制裁を決議するときには、拒否権を行使しないだろうということだ。

 国連安保理で最も大きな力を持っているのはアメリカで、安保理常任理事国間で決議するときも、最も大きな存在感を持っているのはアメリカである。

 となると、中国は韓国と距離を置き、日本とも自ら関係改善に動こうとはしない状態で国連において協力的であろうとすれば、アメリカと接近するしかない。

 その意味で、1月7日付の本コラム「北朝鮮核実験と中国のジレンマ――中国は事前に予感していた」に書いたように、北朝鮮の「水爆実験」(と北朝鮮が主張する核実験)によって、米中間の距離が縮まるだろうことが考えられる。

 それが軍事的協力にまで行くか否かは大きな分岐点となるが、米中の接近は北朝鮮にとっては一番大きな「屈辱」であり、脅威となることを、中国は計算している。

中朝関係は50年代からギクシャクしている

 中朝関係は1950年6月に起きた朝鮮戦争時代から、本当はギクシャクしている。朝鮮戦争は北朝鮮の最高指導者・金日成(キム・イルソン)が旧ソ連のスターリンと示し合わせて発動したものである。建国の父・毛沢東は金日成とスターリンの策略に嵌(は)められ、やむなく参戦した。1949年10月に建国したばかりの中国は、体力を消耗しているのに中国人民志願軍を編成して北朝鮮を応援した。毛沢東は自分の息子である毛岸英を北朝鮮の戦場で戦死により失っている。にもかかわらず、朝鮮戦争が1953年7月に休戦すると、金日成は自分の権威を高めるために、まるで「朝鮮戦争を休戦に持っていき、敗戦しなかったのは自分の手柄だ」とばかりに中国人民志願軍の死の貢献を高くは評価しなかった。自分の息子を北朝鮮のために失った毛沢東としては、「耐え難い」思いをしたにちがいない。

 そればかりか、60年代から中ソ対立が始まると、北朝鮮はソ連と中国の両方に等距離関係を保ち、漁夫の利を得ようとしていた。旧ソ連から豊かな原油をもらい潤った北朝鮮は、64年に核実験に成功した中国に核実験のノウハウを求めた。

 しかし、あの戦略家の毛沢東が北朝鮮を警戒しないはずがない。核の技術は伝授しなかったが、経済支援と軍事同盟を約束している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フォード、今年はEV部門で最大55億ドルの赤字見通

ワールド

日航機がデルタ機と地上接触、米シアトル空港で けが

ワールド

トランプ氏の「出生地主義」制限にまた差し止め、米連

ビジネス

全米鉄鋼労組会長、日鉄・USスチール提起訴訟の棄却
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 7
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 8
    【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリ…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中