最新記事

米外交

北朝鮮核実験で槍玉に挙げられるオバマの「弱腰」外交

予備選真っ盛りのアメリカでは共和党候補が民主党外交を一斉攻撃

2016年1月7日(木)16時05分
ミシェル・ゴーマン

「水爆」実験? 北朝鮮政府の「水爆実験に成功」という主張には懐疑的な見方が出ている KCNA-REUTERS

 今週、約3年ぶりに核実験を実施した北朝鮮は、「初めての水爆実験に成功した」と発表した。しかし多くの専門家は、爆発規模の小ささなどから、「水爆実験」との主張には懐疑的だ。アメリカ政府も、ホワイトハウスの報道官が記者会見で「これまでの分析結果は北朝鮮の主張と一致しない」と語り、否定的な見方を示している。

 その一方で、大統領選予備選真っ盛りのアメリカでは、共和党の上層部と予備選の候補者たちが、間髪入れずにバラク・オバマ米大統領の「無為無策」を叩き始めた。国際社会で孤立する北朝鮮が核兵器の製造能力を獲得できたのは、オバマが弱腰だったからだというのだ。

 共和党候補のジェブ・ブッシュはツイッターで、北朝鮮の核実験は「無責任なオバマ=クリントン外交の危険性を示した」と批判。兄のジョージ・W・ブッシュが大統領だった06年に北朝鮮が最初の核実験を行ったことには、ほおかむりを決め込んでいる。

 北朝鮮の大規模な核施設が衛星画像で確認されて以降、長らくアメリカと北朝鮮はにらみ合いを続けてきた。ビル・クリントン政権下の94年、北朝鮮が核開発計画の凍結を受け入れ、米朝枠組み合意が締結された。

 その後、ブッシュ政権時代の02年、北朝鮮がウラン濃縮計画を進めていることが明らかになり、合意は事実上決裂。4年後、北朝鮮が最初の核実験を実施した。

 今週5日の夜、韓国気象庁が北朝鮮北部で人工地震を観測した。翌6日午後、北朝鮮の国営メディアは、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の命令で小型の水素爆弾の実験に成功したと発表した。実験場は過去の核実験に使用されたのと同じ場所だ。

 アメリカ議会下院のケビン・マッカーシー院内総務(共和党)は直後の声明で、「無力外交」のオバマが独裁者に立ち向かわなければ世界は危険な状態に陥ると、次のように非難した。「北朝鮮が過去最強の核兵器の実験を実際に行ったかどうかは不明だが、オバマ大統領のあきれるような弱腰外交が北朝鮮による核戦争の絶えざる脅威をますます悪化させていることは確かだ」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務省、フーシ派を「外国テロ組織」に再指定

ビジネス

米小売大手、関税の影響懸念 「農産品は数日で価格上

ワールド

アングル:欧州企業、トランプ関税第2波に備え 「プ

ワールド

カナダの銀行の米進出「フェアでない」、トランプ氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政権の対カナダ25%関税
  • 3
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    バンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁書に…
  • 7
    米大統領執務室での「公開口論」で、ゼレンスキーは…
  • 8
    「70年代の日本」を彷彿...発展を謳歌する「これから…
  • 9
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 10
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中