やがて中国が直面する「国際的代償」、南シナ海の紛争に国際裁判所が手続き
裁判自体を否定する中国だが、不利益な裁定が出れば外交上の重荷に
12月2日、一部の外交関係者らによれば、南シナ海における領有権問題に関してフィリピンが中国を相手取って起こした仲裁手続きについて、常設仲裁裁判所が最終的にフィリピンに有利な裁定を下せば、中国は外交・司法面での強い圧力にさらされる可能性がある。写真は、中国が人工島を建設している南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁。5月代表撮影(2015年 ロイター)
常設仲裁裁判所(オランダ、ハーグ)は10月末、南シナ海における領有権問題に関してフィリピンが中国を相手取って起こした仲裁手続きについて、同裁判所に管轄権があるとの判断を示した。このとき中国政府は「何ももたらさない」としてこの判断を受け入れていない。
こうした中国の主張には、フィリピン当局者だけでなく、一部の外交関係者および専門家も賛同しておらず、常設仲裁裁判所が最終的にフィリピン政府に有利な裁定を下せば、中国は外交・司法面での強い圧力にさらされる可能性があると述べている。
司法専門家によれば、管轄権をめぐる審理における中国側の主張に対して同裁判所が詳細に反駁(はんばく)していることから、フィリピン政府が勝利を収める可能性はかなり大きいという。最終的な裁定は2016年半ばに予定されている。
外交関係者・専門家によれば、こうした裁定が下れば、特に地域的な会合の場において中国の重荷になるという。南シナ海の紛争に国際裁判所が初めて介入することになり、中国政府としても無視しにくくなるからだ。
フィリピン政府が2013年に常設仲裁裁判所に申し立てを行ったときにはほとんど注目を集めず、その後ももっぱら、航路をめぐって展開される緊張の添え物のような扱いを受けていたが、一部のアジア・西側諸国が仲裁裁判所によるプロセスに対して表明する支持は強まりつつある。
ある専門家は、もし主要な論点について中国に不利な裁定が下されれば、2国間会合や国際的なフォーラムにおいて、西側諸国が中国政府に対する圧力を維持する協調的な立場を取るようになることが予想される、と指摘する。
「他国は中国政府を批判するための材料として裁定を利用するだろう。だから中国はこの問題でひどく動揺している」と語るのは、東南アジア研究所(シンガポール)の南シナ海専門家、イアン・ストーリー氏。
ワシントンの戦略国際問題研究所の安全保障専門家ボニー・グレーザー氏も「ここに都合の悪い真実がある。中国側は、(仲裁裁判所による裁定を)無視し、拒絶することなど簡単だという素振りを見せてきた。しかし実際には、彼らは国際的な代償を払わざるをえなくなると思う」との見方を示した。
提訴は「無意味」と中国は主張
フィリピン政府は、国連海洋法条約(UNCLOS)で認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う権利に関する裁定を求めている。