やがて中国が直面する「国際的代償」、南シナ海の紛争に国際裁判所が手続き
同条約は主権問題を対象としてはいないが、島嶼(とうしょ)・岩礁などを起点として主張可能な領海・経済水域の体系を大枠で定めている。
実質的に南シナ海全域に関する権利を主張している中国は、国連海洋法条約を批准しているとはいえ、今回の審理に参加することを拒否し、この件に関する常設仲裁裁判所の管轄権を否定している。この水域の各部分については、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾も権利を主張している。
法律の専門家によれば、中国に不利な裁定が下された場合、法的な拘束力は持つものの、裁定を執行する機関が存在しないため、政治的圧力以上の効果については予想できないという。
常設仲裁裁判所からのコメントは得られなかった。
中国外務省は1日、中国に対して課されるいかなる決定も中国政府は承認しないとの主張を繰り返した。同国は11月24日、この裁判について「南シナ海における中国の領海主権を否定しようとする無益な試み」だとしている。
オーストラリア国立大学のマイケル・ウェスリー教授(国際関係論)は、中国はいかなる裁定にも拘束される気はないだろうと語る。
「南シナ海問題は中国の考え方を示す典型的な例だ。中国は、現実には(大規模な)紛争のリスクを引き受けることなく、この地域における米国の優位を拒否・排除し、中国がその立場を引き継ごうとしている」と同教授は話す。
国際的な関心の高まり
外交関係者の多くにとって、この裁判は、年間5兆ドル(約613兆円)もの海上貿易が経由する航路に関して、中国に国際的な法規範を受け入れさせるうえで重要である。
ベトナム、マレーシアなどこの海域に関して領有権を主張する国の他にも、日本、タイ、シンガポール、オーストラリア、英国など、常設仲裁裁判所による裁定を遵守するよう中国に要請した国は多い。
米政府は同裁判所での審理プロセスを支持しているし、ドイツのメルケル首相も10月に北京を訪問した際に、南シナ海での紛争の解決に向けて国際司法に委ねるよう中国に示唆した。