ベルギーの若者はなぜテロ組織ISISに魅せられたか
「だから、若者は他に救いを求める」とファンデルハーゲン氏は言う。「街の言葉」を話せるイスラム国の徴募員に魅了されてしまうのだ。たとえば、ソーシャルメディアを駆使する「シャリア・フォー・ベルギー」である。今年初め、この組織のリーダーを初めとする数十名のメンバーが、シリアに多くの戦闘員を送り込んだとしてフランドル地方の都市アントワープで有罪判決を受けている。
モレンベークの女性区長は、モレンベークについて「過激な暴力の温床」であると表現し、当局が問題を掌握するに至っていないことを認めている。たとえば、2014年以来、22万人の住民を抱えるモレンベーク警察管轄区域では、4名の警察官が過激主義に目を光らせている。「それでは不十分だ」と区長は言う。
人口比では欧州最多となる、少なくとも350人が戦闘員としてベルギーからシリアに向かい、他の者から英雄視されている以上、もっと対策が必要だと考える人は多い。
新たにシリアに向かう人数は、2012─13年の月間10─12人から今年夏には月間約5人と半減したものの、テロ対策専門家のリック・コールサート氏によれば、今日見られる新世代のIS戦闘員予備軍は、さほど理想主義的ではなく、「サディスティックで冒険・スリルを求める」より「ハードコア」なグループであると言う。
「この未来がない雰囲気のなかで、社会から逸脱する行動に対する新たな受け皿となっている。彼らに何らかの帰属意識を持たせている」と同氏は言う。
ブリュッセルの未成年者矯正施設でムスリムのカウンセラーとして働くMohamed Azaitraoui氏によれば、彼が担当する入所者80人のうち4人が、ISとの関連を疑われて治安機関に連行された。
最近同氏は、17歳の入所者に対して数カ月にわたるカウンセリングを行ったが、その入所者はシリア人の徴募担当者とネットで直接連絡を取っていたと思われるという。
職業上の経験から、Azaitraoui氏はティーンエイジャーである自分の子どもについても特に注意をしているという。「あの世代は、自分を(映画の主人公)ランボーのように無敵であると考える。シリアで救済が待っていると言われれば、ありがたい神話のように受けとめてしまう」と指摘する。
(Alissa de Carbonnel記者)
(翻訳:エァクレーレン)