一人っ子政策ついに廃止でも変われない中国
形骸化している政策を今さら転換しても、少子高齢化の流れは止まらない
抜け穴も 2人目が欲しい家庭には、既に2人目がいる可能性が高い Kim Kyung-Hoon-REUTERS
中国が30年以上にわたって続けてきた一人っ子政策をついに廃止する。共産党が党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で決定したもので、これからはすべての夫婦が2人目の子供を持てるようになる。国営の新華社通信によれば、目的は「人口推移のバランスを取り、高齢化問題に取り組むため」だという。
この方針転換の政治的メッセージは大きい。国内外の専門家が人口動態に関する危機を予測していたにもかかわらず、中国政府は一人っ子政策の廃止に乗り気でなかった。この政策がカネのなる木でもあったからだ。
政府は関連手数料という名の違反者からの罰金を年間で30億ドル以上徴収してきた。だが、この数字は控えめなものかもしれない。ある中国人弁護士の分析によると、13年には31行政区中23の行政区だけで31億ドルもの罰金が徴収されているからだ。
この驚くべき数字は、一方で別の現実をも物語っている。これほど大勢の人たちが一人っ子政策を無視しているということだ。2人(あるいは3人や4人)の子供を持つことは罰金を払う余裕がある家庭や、罰金を回避できると確信している家庭には常に選択肢としてあった。
実際のところ、一人っ子政策は今や例外と抜け穴だらけ。既に多くの夫婦には2人目の子供を持つことが認められている。例えば、少数民族や農村在住者、どちらかの親が一人っ子である場合などだ。長子が障害児だったり、一部の省では長子が女児だった場合も2人目を持つことができる。
さらに罰金が歯止めとなるはずのこの政策は富裕層には通用しなかった。しかも2億7000万人以上いる国内移民は転居を繰り返すことが多く、当局の管理から逃れてきた。
要するに、中国で2人目の子供を希望した家庭には、既に2人目がいる可能性が高いということだ。一人っ子政策が緩和された13年、人口統計学者らは2人目を持つ資格が新たに認められる夫婦は1000万~2000万組いるだろうと予測した。しかし、今年の5月時点で許可を申請した夫婦は150万組以下にとどまっている。
「二人っ子」にスライドしただけ
一人っ子政策を完全廃止しても、中国でベビーブームが起こる可能性は低いだろう。根本的な問題は、家族計画に関する中国政府の姿勢ではなく、社会の変化にある。
世界中の政府と同じように、中国政府も気付いている。都会的な生活を送り、教育レベルが高い市民は概して、大家族を作りたいと思わないということに。中国の合計特殊出生率は13年で1.67人とかなり低く、一人っ子政策を完全撤廃しても解消されることはないだろう。同政策についての著書もあるジャーナリストのメイ・フォンが指摘するように、多くの中国人女性は、出産すれば必死で手にしたキャリアを棒に振ることになると考えているからだ。