対ISISで「不可欠な国」に、プーチン流政治の落とし穴
「プーチン氏は優れた戦術家ではない。イスラム教スンニ派を敵に回している。彼らは同氏に恨みを抱くだろう」と、ロシア専門家で米シンクタンク、ブルッキングス研究所所長のストローブ・タルボット氏は指摘。「国内ではすでに、イスラム過激派との問題を抱えていた。それがロシア旅客機墜落事件以降、国外でもISという問題に対処しなくてはならなくなった」
同氏によると、プーチン氏はシーア派が多数を占めるイランやレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」と協調することで、西側による制裁でロシア経済が依存する石油の価格を引き下げているサウジアラビアなどスンニ派諸国を敵に回すリスクを負っているという。
欧州の外交官らは、たとえロシアや欧米諸国がイスラム国掃討で団結し、シリア問題の解決に共通の利益を抱くとしても、トルコやサウジ、そして恐らくイランはシリアで内戦が続くことに利益を見いだす可能性があるとみている。
「プーチン氏は、アサド政権を継続させるか、ISを壊滅させるかの選択に直面するという、自身が招いた状況で板挟みにあっている」とタルボット氏は指摘。「ISは勢力を拡大しているため、アサド政権退陣の先延ばしはロシアにとって大きな代償となっている」
ロシア国内では、1990年代のチェチェン紛争以来、モスクワや他の都市で攻撃を繰り返すカフカス地方のイスラム武装勢力が急速に台頭する可能性に直面していると、タルボット氏は付け加えた。
(Paul Taylor記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)