最新記事

欧州

2017年までにEUに難民300万人流入、成長押し上げ見込む

欧州委員会の経済見通しによると、難民受け入れによりEU域内GDPが最大0.26%上昇

2015年11月6日(金)11時52分

11月5日、欧州委員会は経済見通しのなかで、2017年までに300万人の難民が域外からEU加盟国にやってくると見込んだ。難民が社会の中で労働力として融合すれば、経済成長を押し上げ、長期的には財政改善につながる可能性があるとしている。写真は同日、ギリシャのレスボス島の海岸のシリア難民の親子(2015年 ロイター/Alkis Konstantinidis)

 欧州委員会は5日、欧州連合(EU)加盟28カ国に関する経済見通しを公表し、2017年までに300万人の難民が域外からEU加盟国にやってくると見込んだ。難民が社会の中で労働力として融合するならば、EUの経済成長を押し上げ、長期的には加盟国の財政状態の改善につながるかもしれないとしている。

 15年は100万人の難民がEUに到着する見込み。16年は150万人、17年も50万人がやってくるとしている。

 EU加盟国が到着した難民の半数を受け入れ、その4分の3が労働年齢にあると仮定した場合、EUの労働力人口は15年段階で0.1%増えると見込まれる。16、17の両年はそれぞれ0.3%増加するとしている。

 受け入れた難民が、受け入れ国の国民と同じレベルの技能や職能を持っているとすると、EUの域内総生産(GDP)を16年に0.21%、17年は0.26%押し上げるという。

 難民が低い水準の技能や職能しか持たない場合は、16年で0.14%、17年で0.18%の押し上げにとどまる。

 難民流入に伴うEU加盟国の財政悪化は少ないとされている。EU全体の財政赤字は16、17両年でそれぞれ域内GDPの0.04%しか増えない。一方で、19年と20年にはそれぞれ0.03%と0.05%の改善になると推計している。

 欧州委員会は「難民受け入れに伴う追加的な財政支出は国によって異なるが、ほとんどのEU加盟国にとって、その額は限定的なものにとどまる」としている。

 難民が通過する国のうち最も影響が大きい国でも、今年の財政的なコストは最大でGDPの0.2%にとどまり、16年には総じて安定すると見込まれている。

 ドイツなど最終的な難民受け入れ国にとっての財政コストは、15年でGDP比0.2%が見込まれる。16年はいくつかの国で若干増えるとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、ホンダとの統合協議を白紙に 取締役会が方針確

ワールド

「ガザ所有」のトランプ発言、国際社会が反発 中東の

ビジネス

EU、Temu・SHEINに販売責任 安価で危険な

ビジネス

独プラント・設備受注、昨年8%減 2年連続のマイナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 6
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 7
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」…
  • 10
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中