最新記事

戦争

ドローンの次は、殺人ロボット

人間に代わって機械に戦争させるアイデアのアナーキーな帰結

2015年10月26日(月)17時00分
ローレン・ウォーカー

より正確? 遠隔操作で敵に命中できない人間代わってAIが撃つ日は近い DARPA

 殺人ロボットというと、映画『ターミネーター』のように遠い未来の話に聞こえるかもしれない。だが、自律的に動く兵器システムが、誰の指示もなく人を殺戮できる時代はすぐそこまで来ている。

 実際、米兵が何千キロも離れた標的をドローンで攻撃している間にも、米軍はコンピューター制御のドローンをテストしている。ものの数年で実用化されるだろう。人間がそれを止められなければ、だ。

 自律的殺人システムを国際条約で禁止するためのロビー活動をしている複数のNGOで構成する「殺人ロボットを止める運動」は先週、ニューヨークの国連ビルに集まり、報道陣に嘆いた。自律的に動く機器の開発は、それを止めようとする外交努力のスピードをはるかに上回っていると。

 殺人ロボットをめぐる最大の懸念事項は、敵を殺すという決定権が将来、機械に与えられることだ。オンライン雑誌の「ザ・インターセプト」が最近暴露したドローンについてのリーク情報によれば、人間が遠隔操作のドローンで標的を殺そうとしたアフガニスタンでの作戦では、殺された10人のうちの9人が人違いだった。現在入手可能な人工知能(AI)で自律的兵器システムを使ったとすれば、犠牲者の数はさらに増えるだろうと、豪ニューサウスウェールズ大学のトビー・ウォルシュ教授(AI)は言う。

 機械は兵士と民間人を識別できないし、敵の攻撃の殺傷力によって反撃手段を変えることもできないだろう、とウォルシュは言う。コンピューター制御の兵器はすぐにでもできるが、これらの脳になるべきAIがターミネーターレベルの完成度に達するには、「あと50年前後」はかかるという。

「コンピューターはいくつかの機能で人間よりはるかに速い。戦争ではその数秒が有利に働く、という国は少なくない」と、国連の超法規的・即決・恣意的処刑問題の特別報告者、クリストフ・ハインズは言う。「また命中率が高くなるという国もある」

殺人ロボットには戦争犯罪を問えない

 この分野で最も進んでいるのはおそらく、軍事的なスーパーパワーであるアメリカだろう。「国防総省は自律性の実現に集中している」と、国防総省の報道官エイドリアン・ランキン・ギャロウェイは言う。

 しかし効率的に殺すことは、必ずしも戦争をより「人間的」にすることにはつながらないと、国際ロボット武器管理委員会のイアン・カー博士は言う。人命と軍事費のコストが下がることで、戦争はより頻繁に起こるようになるだろう、とウォルシュは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中