ロシア参戦で錯綜するシリアの空爆地図
米軍の空爆の多くは、トルコ国境に近いクルド人の都市コバニに対して行われてきた。コバニは昨年10月ISISの手に落ちたが、米軍の支援を受けて、クルド人部隊が奪還に成功。その後もISISは再侵攻を試み、クルド人部隊との間で激しい戦闘が繰り返されている。ISIS掃討に及び腰だったトルコは7月末、ようやく米軍の基地使用を許可。米軍は8月、トルコのインジルリク空軍基地から有人戦闘機による空爆を開始した。
イギリス
イギリスは、公式にはまだシリア領内の空爆を行っていない。2013年8月に英議会の決議で攻撃が禁じられたからだ。だが、英人権団体リプリーブの情報公開請求で、英軍のパイロットがISISに対する空爆に参加していたことが7月に明らかになった。イギリスはまた、ISISの戦闘員となったイギリス人2人をドローン攻撃で殺害している。9月8日にデービッド・キャメロン首相自らが発表した。
フランス
フランソワ・オランド仏大統領は9月27日、ISISに対して初の空爆を行ったと発表した。フランスはこの1年、シリアのISISを空爆すればアサド政権を利することになるとして攻撃を控えていたが、シリア難民の大量流入を止めるために参加を決めた。フランスは今週、アサド政権の戦争犯罪についての捜査にも着手している。
トルコ
シリアの北に位置するトルコは、アサド政権の打倒を目指している。今年はまだアサド軍に対する攻撃は行っていない。しかし、7月20日にトルコ南部の自爆テロで30人以上が死亡し、さらに国境付近での銃撃でトルコ軍兵士が1人殺害されると、7月24日にISISに対して初の空爆を行った。トルコ政府はまた、国境に接するシリア北部からISISを排除し、「安全地帯」を作ることをアメリカなどに提案している。難民を収容すると同時に、シリアの反体制派の活動拠点にするためだ。
一方、ISISと同じイスラム教スンニ派に属するトルコ政府に対しては、ISISの勢力拡大を助けているという批判もある。トルコのメディアは、同国の情報機関がISIS向けとみられる武器をシリアに送ったと報じ、米政府からはトルコ国内のISIS戦闘員を放置していると批判されている。
イスラエル
ISISへの空爆には参加していないが、非武装地帯のゴラン高原を挟んでシリアと国境を接しているためとばっちりを受ける。シリアからロケット弾が飛んできたり、イスラエル軍によれば同国内に潜入しようするテロリストもいる。イスラエルを危険にさらすこうした行為は容赦しないとして、軍はためらわず反撃している。