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あの習近平もかすんだローマ法王訪米の政治力

2015年10月2日(金)17時20分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 その上、民主・共和両党の勢力が拮抗しているので、大統領選では時々決定的な役割を演ずる。00年の選挙では開票結果でブッシュ、ゴアが拮抗し、わずか537票差でブッシュが勝った。再集計などで逆転していたら、当時の選挙人の数で25人分がひっくり返り、ゴアが大統領になっていたのだ。

 フロリダ州のキューバ系移民は共産主義から逃げてきたので、伝統的に保守、共和党を支持してきた。しかし、キューバ系でも若年世代の大多数は、キューバとの国交正常化を支持するようになっている。

 共和党から大統領選に名乗りを上げたジェブ・ブッシュ(07年までフロリダ州知事)とマルコ・ルビオ(キューバ系の同州選出上院議員)は、キューバとの国交正常化の旗印を掲げて、キューバ系移民の間での支持を固めようとした。そこをオバマがトンビのごとく、キューバとの国交正常化という油揚げをさらっていってしまった──こういう構図が見える。

 こうして法王は、同時期に行われた中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の訪米もすっかりかすませ──バチカンと中国には「国交」がなく、関係は対立気味──さっそうと帰国した。宗教は人、票に関わる。法王の訪米は単なるお祭りではなく、「政(まつりごと)」だった。

[2015年10月 6日号掲載]

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