【写真特集】紫煙に覆い隠された、たばこ産業の現実
世界的に見れば喫煙者数はむしろ増加傾向。この産業がはらむさまざまな問題点とは
タバコの葉を仕入れる際に品質をチェックするインドのたばこ会社のテイスターは、仕事のために1日当たり100本ほどの葉巻きたばこを吸う
400年という長い歴史を持つたばこ産業は現在、健康への影響を懸念する先進諸国では大きな変化の時を迎えている。喫煙者数は減少し、広告の制限や公共スペースの禁煙化など政府による規制も進んでいる。
しかし世界的に見れば、喫煙者数はむしろ増加傾向にある。WHO(世界保健機関)によれば、その数は10億人以上。生産地も先進国から新興国へ移行。たばこメーカーはより賃金の安い労働者を雇うことで、世界経済が金融危機で大きく減退した後も利益を増やし続けている。
たばこを取り巻く各国の現状を追い、写真に収めたロッコ・ロランデッリの作品からは、この産業がはらむさまざまな問題点を見て取ることができる。
生産現場では、濡れたタバコの葉に触ることで起こる中毒症状「グリーン・タバコ病」に未成年の労働者までが苦しんでいる。規制が甘く、いまだに広告活動が盛んな国では、未成年者の喫煙率の高さも大きな社会問題だ。インドネシアでは、子供の30%が10歳までにたばこを吸い始めるという。
闇市場での取引や偽造たばこの存在も、こうした問題の実態を正確に把握し、対応する上で大きな障害になっている。安くて粗悪な偽造たばこが、生産者から消費者に至るまであらゆる人々の健康をより危険にさらしているということだ。
その結果、喫煙が要因となって発症した癌により、毎年600万人が命を落としている。
先進国では健康関連の予算のうち最大10%が、喫煙しなければ防げたかもしれない癌の治療に使われている。アメリカでは喫煙関連の医療費が毎年960ドルに上る。それでも、予算が足りずに必要な治療が受けられるのはごく一部の人だけ、という途上国に比べればまだ恵まれているのだろうが。