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安全保障

脱原発に必要な抑止力とは

2015年8月18日(火)17時04分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 その結果、日本の原発は、隕石落下はまああり得ないにしても、テロやミサイル攻撃、地盤崩落といった事態には脆弱なままとなっている。国土の狭い日本では、集団大量避難を強いかねない、しかもいざというときには責任の在りかが不透明な、原発のような大型装置は置かないに越したことはない。

 原発は、原爆と切っても切れない関係にある。原発を持っているだけで、核武装能力ありと思われ、核保有国も注意を持って接する。日本の周囲ではロシアだけでなく、中国、北朝鮮が核兵器を保有し、韓国も保有への野心をのぞかせる。

 この環境で日本が原発を全廃するには、サウジアラビアがパキスタンと合意しているといわれるような有事の原爆「融通」の約束か、原爆に代わる抑止力を整備しないといけない。ミサイルを撃破できるだけでなく、日本に核テロを仕掛けようとする国に対しては、同等の被害を与える報復能力も備えなければいけない。他方、核の研究・利用は人類にとって絶対必要なので、量子コンピューター開発、常温核融合技術の開発などで専門家を維持していけばいい。

 コンセンサス社会にありがちの「この辺りがせいぜい」という大人びた諦めではなく、各省庁の縄張り、規制の網の目を創造的に組み替えて、目標を実現する工程を提言する、チャレンジ精神を持とうではないか。

[2015年8月11日号掲載]

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