【写真特集】打ち捨てられたイタリア文化遺産
財政難で多くの文化遺産や遺跡が修復されないまま崩壊の危機にある
シチリア島のセリヌンテにある古代ギリシャの遺跡、ヘラ神殿。いくつかの修復家チームが損壊を防ごうと手を尽くしてきたが、費用不足の影響は大きい。最後に修復作業が行われたのは80年代だが、鉄の棒が石に残されたままでかえって痛みの原因になっている(14年5月)
「コロッセオ(円形闘技場)がある限り、ローマはある。コロッセオが崩壊すれば、ローマは崩壊する。ローマが崩壊すれば、世界が崩壊する」。8世紀の聖職者ベーダのこの言葉は、勝利の可能性と戒めを垂れるものとして今日でも示唆的だ。
芸術・文化遺産が数多いという点で、イタリアは世界でも比類なき存在だ。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の文化遺産の数は世界一だし、憲法で「歴史・芸術遺産」の保護をうたう数少ない国でもある。
だが経済危機による財政難で、多くの文化遺産や遺跡が修復されないまま、崩壊の危機にある。写真家のステファノ・デ・ルイージは南のシチリア島から北のベニスまでイタリア中を回り、その現状を写真に収めた。
考古学者で歴史家のサルバトーレ・セッティスは、イタリアの文化遺産は欧州共通のアイデンティティーを形成するのに貢献できると指摘する。「博物館や記念碑がたくさん存在することで、イタリアには独特の統一感が生まれている」
遺産を朽ち果てるまま放置する代わりに上手に活用すれば、イタリア経済にとっても再生のチャンスとなるのだが。