最新記事

犯罪

ノルウェー警察が10年間一人も射殺していない理由

今年だけで既に600人射殺しているアメリカとの差は警官に対する信頼度の差

2015年8月3日(月)15時59分

武装は例外的 銃を携行してオスロ空港をパトロールする警官 Audun Braastad-NTB Scanpix-REUTERS

 ノルウェーの警察官はほとんど銃を使ったことがないと、政府統計は示す。実際、警官が誰かを射殺したのは2006年、ほぼ10年前のことだ。

 銃を使わない最たる証拠が、2011年に起きたノルウェー連続乱射テロ事件。オスロとウトヤで77人が犠牲になった。警察は容疑者に向けて発砲したが、一発だけ。2014年には、警官は計42回銃を抜いたが、撃ったのは2回だけだ。いずれの事件でも、死者はおろか負傷者も出ていない。

 アメリカでは今年だけで600人が警官に射殺されていることを思えば、これは驚くべきことだ。もちろんアメリカの警官がノルウェーの警官よりはるかに大きな危険にさらされているのも事実だが。

 ノルウェーでは、警察の活動の主体は銃ではない。だから発砲する頻度は極めて低い。イギリスと同じように、ノルウェー警察はパトロールの際武装せず、よほどの事情があるときだけ銃を携行する。
 
 アメリカの専門家は過去に、アメリカの警察の戦術を変更し、力ではなくもっと対面交渉に重きを置けば、少なくとも短期的には撃つのを減らすことができる、と勧告したことがある。だがもっと複雑な問題もある。アメリカでは相対的に警察官が信用されていないことだ。

 社会学者のオッドソンはテックインサイダーの取材に応え、ノルウェーでは人々の警官に対する信頼度が高いことが、銃による衝突が少ない原因の一つだろうと語った。「信頼は、社会を治める非公式な手段として極めて強力なメカニズムだ。人口が少なく、民族的にも同一性が高いノルウェーのような国では、信頼を築くのも比較的た易い。人々の大半が外見的に似た特徴をもち、似たような信仰をもっていることもあり、人々の連帯意識も強い」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米求人件数、10月は予想上回る増加 解雇は減少

ワールド

シリア北東部で新たな戦線、米支援クルド勢力と政府軍

ワールド

バイデン氏、アンゴラ大統領と会談 アフリカへの長期

ビジネス

韓国政府「市場安定に向け無制限の流動性を注入」、ウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計画──ロシア情報機関
  • 4
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 5
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 6
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 7
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    「92種類のミネラル含む」シーモス TikTokで健康効…
  • 10
    赤字は3億ドルに...サンフランシスコから名物「ケー…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中