イラン核協議、合意できても履行はもっと困難
今週末が交渉期限だが、米共和党は黙っていないし、イラン政府は信頼ならない
難しい交渉 ウィーンでイラン核協議に臨むジョン・ケリー米国務長官(7月7日) Carlos Barria-REUTERS
ウィーンで行われているイラン核協議は、交渉期限が7月10日に延長されてギリギリの攻防が続いている。欧米諸国は、イランの核開発を止めるために核施設への査察などを求め、イランは経済制裁の解除を求めている。だが、仮に合意に達したとしてもそれでめでたく終わりにはならないかもしれない。
まず考えられるのは、米共和党の反発。とくに2016年大統領選に名乗りを挙げている候補者からは、非難の大合唱が起こるだろう。イランの核開発に対する監視が甘いとして、早くも合意の取り消しに言及したり、内容を大幅に後退させると公言する候補者もいる。
「私が大統領に選出されたら、就任初日の2017年1月20日に、イランとの合意を撤回する」と共和党候補の1人、ウィスコンシン州知事のスコット・ウォーカーは先週ラジオで語った。
元フロリダ州知事の有力候補ジェブ・ブッシュも、ウォーカーほどではないが批判を強めている。
保守系ウェブサイトに寄せた署名記事の中でブッシュは、「根本的に欠陥のある核合意によるダメージを修復するのは容易ではない」が、それでも合意の見直しは「アメリカの安全保障にとって不可欠だ」と主張した。
現実には、新大統領が就任後すぐに合意を撤回するような確率は低い。一度締結した国際合意をひっくり返せば、外交上、財政上、そして安全保障上の痛手が大きいからだ。仮に本当に共和党の大統領が誕生したとしても、それは不可能だろう。
合意文書に明記されないグレーゾーンも多い
核合意の行方を左右するもう1つの勢力は、もちろんイランだ。
歴代大統領の顧問を務めたワシントン中近東政策研究所のデニス・ロスによれば、イランはこれまで、国際社会の限界を試すような挑発を何度も行ってきた。核問題については特にそうだ。