最新記事

核問題

イラン核協議、合意できても履行はもっと困難

2015年7月8日(水)20時02分
エミリー・カデイ

 合意ができても、いつどんな方法でイランが限界を試してくるかわからない。イランが愚かでなければ、アメリカで新政権が発足してしばらくは挑発的なことはしてこないだろうと、ロスは言う。合意の履行が始まって1年も経てば、いくら共和党でも合意をぶち壊そうとはしないと思わくなる、そこがイランの狙い目だ。

 正念場は、初期段階を過ぎた頃に訪れるかもしれない。その頃には新たな対立が浮上してくる可能性も高いからだ。

 そもそも核合意の履行は、技術的な付属文書、査察の要件、科学研究や貿易の制限などを伴うため、複雑になるのが常だ。合意文書に明確に記されないグレーゾーンも多い。交渉と同じかそれ以上に履行は難しいと、専門家は口をそろえる。

 しかも米イラン関係には、核問題とはまったく別の政治的な力学も作用する。イランのテロ支援だ。核交渉の場では言及されていないが、合意の履行にあたって浮上する可能性がある。

 この点は、大統領選の焦点の1つになるかもしれない。核合意の「違反が発覚し、理屈と主張が飛び交う事態になったとき、どう対処するかがカギになる」と、シンクタンク「新米国安全保障センター」で中東安全保障プログラム・ディレクターを務めるイラン・ゴールデンバーグは予測する。次の大統領が「合意の履行に積極的でない場合、その後の展開は大きく変わるだろう」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール、10月コアインフレ率は前年比2.1%

ビジネス

村田製、営業利益率18%以上・ROIC12%以上目

ビジネス

中国スタートアップ、IPO凍結で投資家の償還請求に

ビジネス

米国債価格が上昇、財務長官にベッセント氏指名で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中