イラン核協議、合意できても履行はもっと困難
合意ができても、いつどんな方法でイランが限界を試してくるかわからない。イランが愚かでなければ、アメリカで新政権が発足してしばらくは挑発的なことはしてこないだろうと、ロスは言う。合意の履行が始まって1年も経てば、いくら共和党でも合意をぶち壊そうとはしないと思わくなる、そこがイランの狙い目だ。
正念場は、初期段階を過ぎた頃に訪れるかもしれない。その頃には新たな対立が浮上してくる可能性も高いからだ。
そもそも核合意の履行は、技術的な付属文書、査察の要件、科学研究や貿易の制限などを伴うため、複雑になるのが常だ。合意文書に明確に記されないグレーゾーンも多い。交渉と同じかそれ以上に履行は難しいと、専門家は口をそろえる。
しかも米イラン関係には、核問題とはまったく別の政治的な力学も作用する。イランのテロ支援だ。核交渉の場では言及されていないが、合意の履行にあたって浮上する可能性がある。
この点は、大統領選の焦点の1つになるかもしれない。核合意の「違反が発覚し、理屈と主張が飛び交う事態になったとき、どう対処するかがカギになる」と、シンクタンク「新米国安全保障センター」で中東安全保障プログラム・ディレクターを務めるイラン・ゴールデンバーグは予測する。次の大統領が「合意の履行に積極的でない場合、その後の展開は大きく変わるだろう」。