混迷極める中東情勢、自力の枠組み構築は不可能に
エジプトでは、選挙で選ばれたモルシ大統領が13年に軍によるクーデターで失脚。今年6月、死刑判決を受けた。現在、大統領に就任しているのは、軍のトップで国防相を務めていたシシだ。
要するに、中東は混乱を極めており、地域の安全保障と外交の枠組みを自力で構築することはもはや不可能だ。世界の大国による、実質的で慎重な外交努力が求められている。
中東が重要な地域である理由は、石油だけではない。対立が悪化して拡大すれば、やがて大国を巻き込むと、私たちは20世紀に学んだはずだ。
ISISなど過激派との戦いは、軍事的にもイデオロギー的にも消耗戦だ。地域の包括的な枠組みだけでは倒せないだろう。しかし、イランやサウジアラビアが次々に代理戦争の火を放てば、世界は危険にさらされる。
ナポレオン戦争で混乱したヨーロッパは、1814年に始まったウィーン会議で新たな国際秩序を築いた。オーストリアの外相として会議を主宰したメッテルニヒのような政治家は、現代の中東にはいない。
ここで、日本は独自の役割を演じることができる。日本政府とサウジアラビア政府の関係はかなり良好で、イラン政府との結び付きも強い。日本は双方から信頼を得ている数少ない国として、地域の外交および安全保障の枠組みづくりを主導すれば、全体として受け入れられやすいだろう。
欧米や中国にも果たせる役割はあるが、先頭に立つのは日本が最適だろう。リスクの高い外交戦略だが、力強い外交姿勢を発信すれば、日本が地政学の主役に復帰したというのろしになり、アジアを代表する民主主義国として歓迎される。
[2015年7月 7日号掲載]