最新記事

外交

冷酷ドイツが自己批判「戦後70年の努力が台無しだ」

瀕死のギリシャに一段と厳しい要求を突き付けた債務問題の決着はドイツにとって本当に節約になったのか

2015年7月15日(水)20時07分
フェリシティ・ケーポン

タフな交渉 徹夜の協議でギリシャ支援の最終合意をまとめたメルケルだが Antonio Bronic-REUTERS

 先週末には過酷なマラソン協議の末、ギリシャとユーロ圏首脳がようやく合意に達した。これに対しドイツメディアから、すさまじい反発が巻き起こっている。

 会議は17時間にも及び、まさに消耗戦だったようだ。欧州連合(EU)のドナルド・トゥスク大統領、フランソワ・オランド仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相、そしてギリシャのアレクシス・ツィプラス首相が出席。トゥスクのオフィスで夜を徹して話し合い、ギリシャに3度目の緊急支援を行うことでようやく決着がついた。

 あるEU外交官は、「これまで見た中で最も容赦のない交渉」であり、「特にドイツ側には侮辱的と思えるような態度がみられた」と取材に語った。

 こうした声を受け、今回の協議がヨーロッパにおけるドイツの評判に悪影響を与えるのではないかと懸念する声が独メディアに出始めている。

■南ドイツ新聞(中道左派) 「ドイツ人は卑劣で冷酷でケチ、という消えかけていたイメージを、メルケルは見事に復活させた」

■シュピーゲル・オンライン 「ドイツ政府は戦後70年をかけて積み上げてきた外交努力をたった1度の週末で破壊した」

■シュピーゲル誌 「残虐さのオンパレード」(最終合意案を評して)「ギリシャ支援をケチろうとした分、イメージ回復にはその2倍も3倍も金がかかるだろう」

■TAZ紙(左派寄り) 「(欧州には)ドイツ人の権威主義的で尊大な態度に激怒している人もいる」

ドイツ国民の反応はフクザツ

 ドイツ政府の強硬な態度を揶揄した風刺ビデオも口コミで広がり、YouTubeで100万回以上も再生されている。2人のドイツ人コメディアンが電話で会話をしているが、彼らのセリフはすべてメルケルの実際のスピーチや現地タブロイド紙の見出しから取ったもの。

 その会話は例えばこんな感じだ。

「金欠のギリシャ人め、地中海の島を売れ!(世界遺産の)アクロポリスも!」「第二次大戦の戦時賠償を払えとさ!」「だったらギリシャも、アレキサンダー大王がペルシャ帝国を滅ぼした賠償をするべきだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、自動車関税の負担軽減へ大統領令 供給網

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ300ドル高 決算・指標・

ワールド

ロシアの無条件停戦が和平の第一歩=ウクライナ大統領

ビジネス

スタバ、四半期世界売上高が予想以上に減少 米経済巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中