【WEB再録】泥まみれのFIFA帝国
女性とゲイへの差別発言
ブラッターは常に、自分は人道主義者でフェアプレーの守り神だと称してきた。カタールでの開催に疑問を呈する声が出ても、「先進国の傲慢だ」と言い放ってかわしてきた。
この男に、差別的な発言を非難する権利はない。彼自身、偏見に満ちた発言を繰り返してきたからだ。女子選手は「ぴったりしたショートパンツをはき、襟ぐりの深いシャツを着るべきだ」と語ったこともある。
カタールで同性愛が禁じられている点については、W杯開催中、ゲイのサッカーファンはセックスを「しないほうがいい」とも発言している。
ブラッターはノーベル平和賞を欲しがっているらしい。受賞はあり得ないことではない。これまでも何人もの悪党がメダルをもらっているのだから。
それに、彼は世の中に1つ貢献もしている。「透明性」という言葉のむなしさを世界に知らしめた点だ。FIFA本部のおしゃれなガラスのビルには陽光が差し込み、腐敗を照らし出しているが、それでも彼が腐敗追放に動きだす気配はない。
どれほどひどい腐敗であっても、どれほど権力を乱用する指導者であっても私たちはすぐに慣れて、許してしまう。この事実を、ブラッターは本能的に知っているらしい。
(筆者はニュー・リパブリック誌の編集者で、『サッカーが世界を解明する』の著者)
[2011年6月22日号掲載]