南シナ海の埋め立て終了でも変わらない中国の野心
最大の理由は台風シーズンを避けるため?突然の完了宣言の裏に見え隠れする真意
唐突な宣言 中国は海洋進出をあきらめたのか Edgar Su-REUTERS
中国が南シナ海の岩礁で進めてきた埋め立て工事が、とりあえず終わることになりそうだ。
中国外務省の陸慷(ルー・カン)報道局長は先週、「計画どおり、南沙(スプラトリー)諸島で(中国が)駐留する諸島および岩礁の埋め立て工事は、近日中に完了する」と述べた。ただし「いつ」完了するかは明言していない。
南沙諸島の埋め立て工事をめぐっては、これまでも周辺国から激しい非難が起きていた。それを無視してきた中国が、なぜ今「完了」を決めたのか。
理由はたくさんある。まず、最も単純な理由として、本格的な台風シーズンの到来がある。中国政府は最初から、この海域が台風シーズンに入る前に、埋め立て工事を終わらせるつもりだった可能性がある。
政治的な理由もあるだろう。中国はスカボロー礁(中国名・黄岩島)の領有権をめぐりフィリピン激しく対立。怒ったフィリピンは13年、国連海洋法条約に基づく仲裁を求めて、ハーグの仲裁裁判所に提訴した。
その口頭弁論が7月から始まることになっている。中国は仲裁の有効性を頭から否定して、裁判所からの書類提出の要請にも一切応じてこなかった。それでもフィリピン政府が口頭弁論を展開している間、挑発的な行動は慎んだほうがいいと考えた可能性がある。
アメリカとの関係にも中国政府は配慮したようだ。9月には習近平(シー・チンピン)国家主席が、就任後2度目のアメリカ訪問を行う。米中首脳会談が友好的な雰囲気の中で開かれるようにするには、何らかのプラス材料が欲しい。それが今週ワシントンで開かれる米中戦略・経済対話前に見つかれば、なおいい。
またアメリカは来年、大統領選挙の年でもある。予備選を含め何度か開かれる大統領候補の討論会で、南シナ海における中国の活動がやり玉に挙げられるのは避けたいところだ。
シルクロード構想を優先
さらに中国は、長期的な外交戦略を考えて、埋め立て作業の終了を決定した可能性がある。