南シナ海の埋め立て終了でも変わらない中国の野心
中国は現在、「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海上シルクロード」という包括的な貿易投資計画を進めている。これはアジアからヨーロッパまで65カ国にまたがる壮大なプロジェクトで、「一帯一路構想」とも呼ばれるものだ。
「一帯一路を実現する上で、領土問題は間違いなく邪魔になる。だから中国政府は、南シナ海における戦略を見直す必要がある」と、中国社会科学院世界経済政治研究所の薛力(シュエ・リー)主任研究員は語る。
つまり埋め立て終了宣言は、中国からASEAN(東南アジア諸国連合)への和解の申し出とも言える。中国は昨年も、西沙群島(パラセル)に石油掘削装置(リグ)を設置してベトナムと激しく対立したが、リグ撤収後は、ベトナムとの関係改善に努めている。
南シナ海における領有権拡大と、一帯一路構想の実現という2つの政治目標の間で、中国政府は難しい舵取りを余儀なくされている。長い目で見ると、それは押しては引く、というパターンの繰り返しだ。今の中国は周辺国を安心させるための「引きモード」にある。
だが、ひとたび周辺国を安定させたら、中国は再び「押しモード」に入るかもしれない。老朽化した施設の修繕が必要だとして再び岩礁の「補強」に乗り出す可能性もある。
埋め立て終了を宣言しても、中国が聞き分けのいい国に変身したわけではなさそうだ。
From thediplomat.com
[2015年6月30日号掲載]