最新記事

中国外交

南シナ海の埋め立て終了でも変わらない中国の野心

2015年6月25日(木)11時30分
シャノン・ティエジー

 中国は現在、「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海上シルクロード」という包括的な貿易投資計画を進めている。これはアジアからヨーロッパまで65カ国にまたがる壮大なプロジェクトで、「一帯一路構想」とも呼ばれるものだ。

「一帯一路を実現する上で、領土問題は間違いなく邪魔になる。だから中国政府は、南シナ海における戦略を見直す必要がある」と、中国社会科学院世界経済政治研究所の薛力(シュエ・リー)主任研究員は語る。

 つまり埋め立て終了宣言は、中国からASEAN(東南アジア諸国連合)への和解の申し出とも言える。中国は昨年も、西沙群島(パラセル)に石油掘削装置(リグ)を設置してベトナムと激しく対立したが、リグ撤収後は、ベトナムとの関係改善に努めている。

 南シナ海における領有権拡大と、一帯一路構想の実現という2つの政治目標の間で、中国政府は難しい舵取りを余儀なくされている。長い目で見ると、それは押しては引く、というパターンの繰り返しだ。今の中国は周辺国を安心させるための「引きモード」にある。

 だが、ひとたび周辺国を安定させたら、中国は再び「押しモード」に入るかもしれない。老朽化した施設の修繕が必要だとして再び岩礁の「補強」に乗り出す可能性もある。

 埋め立て終了を宣言しても、中国が聞き分けのいい国に変身したわけではなさそうだ。

From thediplomat.com

[2015年6月30日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、ウクライナ支援継続表明 平和サミット出

ビジネス

エーザイ、内藤景介氏が代表執行役専務に昇格 35歳

ビジネス

シャオミ、中国8位の新興EVメーカーに 初モデル好

ワールド

焦点:米の新たな対中関税、メキシコやベトナム経由で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中