大人のぬり絵が世界で売れる理由
嫌な日常は忘れて『ひみつの花園』や『ねむれる森』に没頭しよう!
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不思議な魅力 バスフォードの新著『ねむれる森――夢いっぱいのぬりえブック』は前作同様ベストセラーに COURTESY JOHANNA BASFORD/LAURENCE KING
赤ちゃん返り、とまでは言わないが、最近は大人が子供の遊びを本気で楽しむのがはやっているらしい。ニューヨークのブルックリンには、大人のための幼稚園がオープンして大盛況だという。
英ガーディアン紙によると、イギリスのアマゾン・ドットコムでは一時、大人向けのぬり絵本がベストセラーの半分を占めた。なかでも注目を集めているのは、スコットランド出身のイラストレーター、ジョハンナ・バスフォードのぬり絵本だ。
13年に刊行された『ひみつの花園──花いっぱいのぬりえブック』(邦訳・グラフィック社)は、世界で約150万部が売れるベストセラーに。今年刊行の新作『ねむれる森──夢いっぱいのぬりえブック』(同)も、既に飛ぶように売れている。
2冊の本に共通するのは、白い紙に黒いインクで手の込んだイラストが描かれていること。森や動物や城など、おとぎ話の一場面のようなイラストが見開きいっぱいに広がっている。そこに色を塗り始めると、時間がたつのも忘れてしまう──そんな大人が増えている。
ぬり絵は超アナログな作業だが、思い思いの色に仕上げたイラストをソーシャルメディアに投稿する人も少なくない。バスフォードも読者から寄せられた「完成図」を自分のウェブサイトで公開している。
バスフォードは昔から「ぬり絵作家」だったわけではない。手描きの壁紙作家をしていたとき、出版社ローレンス・キングの編集者の目に留まり、子供向けのぬり絵本を出さないかと提案を受けた。
「私の作品は白黒の素描画で、『あなたの絵って、ぬり絵をしたくなるのよね』と、以前からクライアントに言われていた」と、バスフォードは語る。「だから(子供向けではなく)大人向けのぬり絵本にしたら面白いんじゃないかと提案した」