FIFAが犯す6つの人権侵害
5)同性愛のサッカーファンにセックス禁止令 スポンサー契約に影響する場合は開催国の国内法まで変えさせるFIFAだが、LGBT(同性愛者などの性的少数者)を取り締まる法律に関しては、驚くほどの「傍観主義」を発揮する。
この問題には関係したくない一心から、22年のカタール大会を訪れる同性愛者のサポーターには、文字どおり「関係しないよう」助言したほどだ。
ジョセフ・ブラッター会長は10年、同性愛が違法であるカタールを22年のW杯開催地に選んだ後、「カタール大会を訪れるゲイの観客は、いかなる性的行為も控えるように」と発言し、謝罪に追い込まれた。
6)スタジアム建設現場の奴隷労働 恐らくサッカーがもたらす最大の悲劇は今も続いている。カタール大会に必要なインフラ建設に従事しているネパール、インド、スリランカなどからの移民労働者たちの死だ。
彼らの労働条件は奴隷状態に近い。賃金は払われず、パスポートは没収。50度に迫る酷暑の中で働かされ、水を飲むことも許されない。国際労働組合総連合は、このままでは試合開催のホイッスルが鳴る前に、最低でも4000人の移民労働者がカタールで死ぬことになると警告している。
どうすればこの惨状を変えられるのかといえば、これといって光は見えない。開催国カタールでは、政党や労働組合の組織は禁じられている。そして大会を主催するFIFAは、かつてジェローム・バルケ事務局長が「W杯を成功させるには、時に民主主義が発達していないほうがいいこともある」と発言したほどだ。
搾取されている何千人もの労働者たちは、この言葉に反発するだろう。しかしFIFAにとって都合のいいことに、彼らには発言権が与えられていない。
[2015年6月23日号掲載]