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中央アジア諸国のいいカモになる「西進」中国

2015年5月20日(水)12時56分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

大国を競わせ利益を狙う

 ネパールへ進出すればインドと摩擦を招く。中国はアラビア海に面したグワダル港の運営権を入手したが、ここはパキスタン政府に逆らうバルチスタン地方にあり、安全の保証はない。「海のシルクロード」と息巻いても、インド洋の制海権は印米豪の手中にある。アフガニスタンで利権を得ても、イスラム過激派と話をつけるのが大変だ。

 ロシアにとっても中央アジアという「勢力圏」での中国の進出は苦々しい。ロシアが見せ球として使ってきたユーラシア開発銀行は資本金がわずか70億ドルで、中国が勧進元の「シルクロード基金」やAIIBの前に色あせた。中央アジアを語らってアメリカの介入を防ぐ盾としてつくった上海協力機構も中ロが足を引っ張り合ったままだ。

 一方、日本にとって中国の西進は東進よりはるかにましだ。AIIBがユーラシアの案件を独占するかのような議論が横行するが、中央アジア諸国は大国を競り合わせ、最大限の利益を搾り取る外交巧者。政府諸機関がばらばらに相争って事業展開する中国は、願ってもないカモに映る。中国との対抗上、ロシアも日本を大事にするだろう。

 夏には安倍首相が中央アジア訪問を考えていると聞く。中国に「ここでも日本が」と思わせることは意味があるだろう。

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