最新記事

核交渉

イラン核合意の実現はアメリカが障害に?

2015年4月10日(金)12時00分
リース・アーリック

即時解除は「幻想に近い」

 欧米諸国による長年の制裁で、イランは大きな痛手を被ってきた。失業率は上昇し、輸入品は不足する一方。アメリカはイランに対し、核燃料の保有量を削減して国連の査察を受け入れるなら、経済制裁を徐々に解除する用意があると伝えている。

 とはいえ、イラン側が満足できるレベルまで制裁を解除するのは容易ではないと、ジョージタウン大学教授で中東問題専門家のポール・サリバンは指摘する。アメリカの経済制裁の中には、79年の駐イラン米大使館人質事件後に決定したものもある。大統領令によるものから議会の決定によるものまで「入り乱れている」とサリバンは言う。「これらの制裁が直ちに解除できると考えるのは幻想に近い」

 イランの強硬派はアメリカへの不信から合意に反対するが、イランの最高指導者ハメネイ師は「当面、彼らは大きな障害にならない」と、協議を支持する。

 だが一方のアメリカはといえば、障害だらけだ。米議会の保守強硬派は、いかなる合意形成にも反対と叫ぶばかりか、新たな制裁を科すべきだとまで主張している。オバマは彼らに拒否権を行使して対抗するかもしれないが、政権への強力な圧力になっているのは間違いない。
最終合意は困難を極めるだろうと元国連のシャイアは言う。イランとの協議は、今後の核問題を解決する上での必要不可欠な第一歩になる。もし交渉が決裂し、アメリカが責任を問われる事態になれば、制裁という手段そのものにも疑問符が付く。

「国際社会に制裁強化を望む雰囲気はない」とシャイアは言う。アメリカだけが、例外のようだ。

From GlobalPost.com特約

[2015年4月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ

ワールド

トランプ氏、5月中旬にサウジ訪問を計画 初外遊=関

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中