最新記事

核交渉

イラン核合意の実現はアメリカが障害に?

核開発問題解決に向け枠組みで合意したが、認識の隔たりは大きく制裁解除の道のりも険しい

2015年4月10日(金)12時00分
リース・アーリック

道半ば 「合意」発表に向かうイラクのザリフ外相(中央左)と、ケリー米国務長官(中央右) Brendan Smialowski-REUTERS

 度重なる期限延長の末ようやくこぎ着けた合意は、大きな前進か新たな困難の始まりか──。イランの核開発問題の協議で欧米など主要6カ国とイランは先週、包括的な解決に向けた枠組みで合意したと発表した。

 今回の合意には、ウラン採掘・精製の規制や国連の査察受け入れなどが含まれる。イランがこれらの条項を実行に移せば、国連安保理はすべての対イラン制裁を同時に解除する方針だ。

 だが、最終合意が得られなければそれも実行できない。期限は6月30日だ。「交渉が成立すれば大きな一歩になる」と国連安保理イラン制裁委員会元委員のジャクリーン・シャイアは言う。「核施設はかつてないレベルで監視される。プルトニウムから核爆弾を造る道は閉ざされ、ウラン濃縮も制限される」

 ただし、主要な問題の数々が今後の協議に持ち越されたのも確かだ。アメリカはイランに核兵器開発の凍結を要求。対するイランは、核開発は平和利用が目的だと主張し、欧米による経済制裁の即時解除を求めている。

 議論が平行線をたどっているのは、双方の認識が食い違っているせいだ。欧米側は、イランが現時点で核兵器を保有せず核兵器開発計画も進めていないことは認めるものの、野放しにすれば短期間で秘密裏に開発しかねないと懸念している。

 これに対しイランは、核兵器開発を計画したことはなく、今後もあり得ないと主張している。イランの化学工学に詳しい南カリフォルニア大学教授のモハンマド・サヒミによれば、彼らは欧米がイランの脅威を故意に誇張していると考えているという。

 たとえイランが少量の核兵器を保有できたとしても、イスラエルやアメリカの同盟国に攻撃を仕掛けることはないだろうと、サヒミは主張する。「何倍もの報復を受ける可能性があることを、彼らはよく理解している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中