イラン核合意の実現はアメリカが障害に?
核開発問題解決に向け枠組みで合意したが、認識の隔たりは大きく制裁解除の道のりも険しい
道半ば 「合意」発表に向かうイラクのザリフ外相(中央左)と、ケリー米国務長官(中央右) Brendan Smialowski-REUTERS
度重なる期限延長の末ようやくこぎ着けた合意は、大きな前進か新たな困難の始まりか──。イランの核開発問題の協議で欧米など主要6カ国とイランは先週、包括的な解決に向けた枠組みで合意したと発表した。
今回の合意には、ウラン採掘・精製の規制や国連の査察受け入れなどが含まれる。イランがこれらの条項を実行に移せば、国連安保理はすべての対イラン制裁を同時に解除する方針だ。
だが、最終合意が得られなければそれも実行できない。期限は6月30日だ。「交渉が成立すれば大きな一歩になる」と国連安保理イラン制裁委員会元委員のジャクリーン・シャイアは言う。「核施設はかつてないレベルで監視される。プルトニウムから核爆弾を造る道は閉ざされ、ウラン濃縮も制限される」
ただし、主要な問題の数々が今後の協議に持ち越されたのも確かだ。アメリカはイランに核兵器開発の凍結を要求。対するイランは、核開発は平和利用が目的だと主張し、欧米による経済制裁の即時解除を求めている。
議論が平行線をたどっているのは、双方の認識が食い違っているせいだ。欧米側は、イランが現時点で核兵器を保有せず核兵器開発計画も進めていないことは認めるものの、野放しにすれば短期間で秘密裏に開発しかねないと懸念している。
これに対しイランは、核兵器開発を計画したことはなく、今後もあり得ないと主張している。イランの化学工学に詳しい南カリフォルニア大学教授のモハンマド・サヒミによれば、彼らは欧米がイランの脅威を故意に誇張していると考えているという。
たとえイランが少量の核兵器を保有できたとしても、イスラエルやアメリカの同盟国に攻撃を仕掛けることはないだろうと、サヒミは主張する。「何倍もの報復を受ける可能性があることを、彼らはよく理解している」