最新記事

南米

米キューバ急接近に涙? 南米の中国離れが始まった

2015年4月6日(月)16時32分
楊海英(本誌コラムニスト)

 キューバ革命当時、共産主義陣営は一枚岩ではなくなっていた。スターリン死後に平和共存を掲げ、キューバ危機後はアメリカとデタント(緊張緩和)に転じたソ連に対して、中国は批判を強めた。何よりフルシチョフと毛沢東は個人的にも折り合いが悪かった。二大巨頭の感情的な対立はさらに中ソのイデオロギー的な論争に拍車を掛けた。

 陣営内での権威を確立しようと、毛も積極的に南米に介入。核ミサイルの配備も躊躇しなかったソ連に対抗し、毛は革命思想を輸出した。中ソの援助で「社会主義の文武両道」を極めた共産ゲリラがキューバに続けと活動を激化。コロンビアの麻薬ゲリラはジャングルでソ連製のカラシニコフ銃を手に、毛の「農村から都市を包囲し解放する戦術」で武装闘争を展開した。

 東西冷戦が終結して四半世紀が過ぎた今日、カストロの弟がようやく重い腰を上げ、オバマ米大統領が統治する「米帝」と外交交渉を再開。中国は表向き「歓迎」しつつも、ハバナにコカ・コーラの匂いが漂い、ピッグス湾岸でアメリカ人が海水浴を楽しむ日が訪れるのを望んでいない。ソ連のように核ミサイルをカリブ海に持ち込む勇気と余力は今のところ、北京当局にはない。それでも、キューバが親米国家になるのを阻止しようと、武器弾薬を今まで以上に輸送する大胆な行動に出た。

 親米国家ながら中国の影響力が増していたコロンビアも、今ではキューバ以上に脱中国化を推進中。ゲリラとの闘争で経済は破綻し、国民の厭戦気分もピークに達している。今回の拿捕は北京への意思表示とみていい。

「アメリカの裏庭」と呼ばれる南米諸国は東欧ほど共産主義の赤色に染まらなかったものの、「ピンク色の準社会主義国家」は多かった。今回の拿捕は、南米が北京の顔色をうかがわなくなった事実を示している。

[2015年3月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中