米キューバ急接近に涙? 南米の中国離れが始まった
キューバ革命当時、共産主義陣営は一枚岩ではなくなっていた。スターリン死後に平和共存を掲げ、キューバ危機後はアメリカとデタント(緊張緩和)に転じたソ連に対して、中国は批判を強めた。何よりフルシチョフと毛沢東は個人的にも折り合いが悪かった。二大巨頭の感情的な対立はさらに中ソのイデオロギー的な論争に拍車を掛けた。
陣営内での権威を確立しようと、毛も積極的に南米に介入。核ミサイルの配備も躊躇しなかったソ連に対抗し、毛は革命思想を輸出した。中ソの援助で「社会主義の文武両道」を極めた共産ゲリラがキューバに続けと活動を激化。コロンビアの麻薬ゲリラはジャングルでソ連製のカラシニコフ銃を手に、毛の「農村から都市を包囲し解放する戦術」で武装闘争を展開した。
東西冷戦が終結して四半世紀が過ぎた今日、カストロの弟がようやく重い腰を上げ、オバマ米大統領が統治する「米帝」と外交交渉を再開。中国は表向き「歓迎」しつつも、ハバナにコカ・コーラの匂いが漂い、ピッグス湾岸でアメリカ人が海水浴を楽しむ日が訪れるのを望んでいない。ソ連のように核ミサイルをカリブ海に持ち込む勇気と余力は今のところ、北京当局にはない。それでも、キューバが親米国家になるのを阻止しようと、武器弾薬を今まで以上に輸送する大胆な行動に出た。
親米国家ながら中国の影響力が増していたコロンビアも、今ではキューバ以上に脱中国化を推進中。ゲリラとの闘争で経済は破綻し、国民の厭戦気分もピークに達している。今回の拿捕は北京への意思表示とみていい。
「アメリカの裏庭」と呼ばれる南米諸国は東欧ほど共産主義の赤色に染まらなかったものの、「ピンク色の準社会主義国家」は多かった。今回の拿捕は、南米が北京の顔色をうかがわなくなった事実を示している。
[2015年3月24日号掲載]