窮乏ギリシャが蒸し返す対ナチス戦争賠償の本気度
緊縮策で対立するドイツへの目くらましか。金融支援問題に浮上してきた思わぬ「歴史問題」
八つ当たり? メルケルをヒトラーに擬した写真を燃やして抗議(アテネ) Yannis Behrakis-Reuters
ギリシャが財政緊縮策の是非をめぐってドイツとの対立を強めるなか、第二次大戦中のナチス・ドイツによる損害の賠償を請求したギリシャ新政権がさらに強硬な姿勢を打ち出している。
ギリシャのパラスケボポウロス法相は先週、国内最高裁の2000年の判決を執行する書類に署名することと、ギリシャ国内にあるドイツ資産を没収する用意があると明らかにした。
ギリシャ最高裁は00年、ドイツに対し、1944年6月にギリシャ中部のディストモ村でナチスに虐殺された住民218人の遺族への賠償を命じている。しかしドイツの反発を恐れた当時の法相は、執行を命じる文書に署名しなかった。
今回の法相の発言は、ギリシャが公的債務残高のほぼ半分に当たる1620億ユーロをナチスの戦争犯罪への賠償金としてドイツに要求し、拒否された直後のことだった。
パラスケボポウロスは、ツィプラス首相も発言の意図は承知しているとして、「政治的に時期が熟せば」執行書類に署名すると語った。
ツィプラスは先週、歴代のドイツ政権は戦時中の賠償金支払いを回避するために「法的トリック」を使っていたと非難した。ドイツは60年の協定でギリシャに1億1500万マルク(当時のレートで約97億7500万円)を支払ったが、それはインフラの破壊や戦争犯罪、ナチスに強要された戦時融資を完全に賠償するものではない、と彼は考えている。
ツィプラスはギリシャ議会で行った感情的な演説の中で、政府は「歴史と戦った人々と、ナチズムを破るために命をささげた犠牲者」への義務を負うと断言した。さらに戦時融資の償還請求権を主張することが自分の「倫理的義務」だと、以前と同じコメントを繰り返した。