ロシアの挑発で国防強化する北欧諸国
NATO非加盟のスウェーデンはフィンランド、デンマークなど周辺諸国との集団安全保障を強化中だ
警戒態勢 ストックホルム群島近くに不審な潜水艦が侵入、捜索に乗り出したスウェーデン海軍の高速戦闘艇 Pontus Lundahl-TT News Agency-Reuters
北欧諸国でロシアの攻撃に対する警戒感が高まるなか、2月にフィンランドと軍事協定を結んだスウェーデンは、今月に入ってNATO(北大西洋条約機構)加盟国のデンマークとも同様の協定を結んだ。スウェーデンのペーター・フルトクビスト国防相は、この協定をNATO加盟に向けた一歩とみるのは誤りだと強調した。
「北欧諸国が2国間及び複数の国家間の協力体制を深化することで、国防を強化し、周辺地域とより広範な領域で有効な作戦行動を実施できる」と、フルトクビストは3日、首都ストックホルムのメディアに語った。「デンマークとの協力の深化は、北欧の近隣諸国との密接な協力体制構築の一環であり、地域の安全保障の強化を目的としたものだ」
NATO非加盟国のフィンランドとスウェーデンが協定を結んだ背景には、昨年3月のクリミア編入以降のロシアの動きがあると見ていい。昨年4月に始まったウクライナ東部の戦闘は今も収まらず、ロシアの軍用機が西側諸国の領空に接近するトラブルが相次いでいる。
スウェーデンは非同盟中立の立場をとってきたが、ロシア空軍は13年4月、バルト海上空でスウェーデンを標的にした模擬演習を実施。昨年10月にはストックホルム群島近くのスウェーデンの領海で不審な海中活動が報告され、ロシアの潜水艦が侵入した疑いが持たれている。
バルト諸国はいずれも昨年、領空近くを飛行するロシアの航空機を確認している。領空侵犯には至っていないが、挑発的とも見える危険な飛行に、スウェーデンとデンマークは強く抗議している。
昨年12月には、コペンハーゲンから飛び立ったスカンジナビア航空の旅客機がロシア軍機と異常接近するトラブルが報告された。
こうした状況下で「周辺国とのパートナーシップを強化するのはごく自然な流れだ」と、フルトクビストは言う。「(フィンランドとデンマークは)隣国であり、わが国と共に北欧防衛協力(NORDEFCO)にも加盟している」NORDEFCOは、北欧の5カ国──デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンから成る軍事協力機構だ。