石油危機とテロ拡大を招くイエメン政局の混迷
宗派戦争も避けられない
一方、ハディ大統領辞任後のホーシー派による実効支配は、政府軍の力を弱体化させ、イエメンを拠点とするAQAPには追い風となりそうだ。
スンニ派武装勢力のAQAPは、アルカイダ系テロ組織の中で最も危険だと言われる。AQAPは、1月に起きたフランスの風刺週刊紙シャルリ・エブド襲撃事件について犯行声明も出している。
その過激さからAQAPはイエメン国内で支持を得られていない。しかしシーア派であるホーシー派の台頭は、同国の多数派であるスンニ派にとって直接の脅威となる。スンニ派部族は消去法でAQAP支持に回らざるを得ないかもしれないと、中東の専門家たちは指摘する。シーア派支配に立ち向かうことができる唯一の勢力がAQAPだからだ。
ホーシー派とイエメン軍は長年、対AQAPで共闘してきた。だが首都の危機と分裂は、AQAPと戦う政府軍の力を弱体化させるだろう。政権が総辞職した今となっては、今後イエメン政府がAQAPの脅威にどうやって対処していくのか不透明な状況だ。
1つだけ明らかなのは、今後ホーシー派とAQAPが共に勢力を伸ばし、泥沼の宗派戦争に陥る可能性が高くなったということだ。
AQAPの伸長は、テロを警戒する欧米諸国にとっても人ごとではなくなるだろう。
[2015年2月 3日号掲載]